はじめに
本記事では、**現在製造職として働いている人が「どうやって年収を上げていけばいいのか」**を、現実ベースで解説します。
この記事の対象
- 製造ラインで働いているけど、この先の年収が不安な人
- 製造職からキャリアチェンジしたい人
- 生産技術・保全・技術職へのステップアップに興味がある人
製造職「だけ」では年収アップが難しい現実
最初にちょっとシビアな話から。
結論:製造職だけで働き続けて、年収を大幅に上げるのはかなり難しいです。
理由はいくつかあります。
- 製造職の給与は、多くの場合
労働時間(シフト・残業・夜勤)と体力に依存している - 基本給のベースアップは限定的
- 職位が上がりにくく、技能に対する評価幅も狭い
大手メーカーの例でいうと、
- 夜勤込みの30代正社員製造職:年収500〜600万程度
というラインが一つの目安です。
中小企業だと、ここからさらに下がるケースも普通にあります。
もちろん、
- 「500〜600万あれば十分満足」
という人もいると思います。
その場合は、この記事を無理に読む必要はありません。
ただし、覚えておいてほしい事実があります。
30代以降、総合職との年収差が一気に開き始める
製造のみなさんが普段関わっている
- 保全(工務)
- 生産技術
- 品質保証(品証)
の中には、**総合職(技術職・事務系)**がいますよね。
同じ年齢でも、
- 製造職:年収500〜600万
- 総合職(技術職など):年収+150〜200万
くらいの差がついているケースはかなり多いです。
そして、この差は年を重ねるごとにどんどん開いていきます。
製造現場で今起きていること:加速する自動化と技術革新
では、現場で何が起こっているのか。
製造業で技術職をやっている身として、現場感をお伝えすると…
- 「あの工程、自動化するらしいよ」
- 「ロボット入るってさ」
みたいな話、もう何回も聞いたことがあると思います。
ロボット工学、FA、AI、画像処理、IoT…
自動化に関わる技術はものすごいスピードで進化しています。
そして、技術者からするとミッションはシンプルです。
「できる限り全自動で生産できる工場を作る」こと
つまり、
- 今手作業でやっている工程
- 経験や勘でやっている微妙な調整
こういったものも含め、
裏側では「どうやって自動化するか」の開発がどんどん進んでいると思ってください。
「製造職で体を動かしているだけ」の状態は、
正直 将来リスクが高い立ち位置 になりつつあります。
年収を落とさずにキャリアアップするには?前提条件整理
とはいえ、
- 「年収を一度ガクッと落としてまで勉強したくはない」
- 「業界をゼロから変えるのはちょっと怖い」
という人も多いはずです。
この記事では、次の前提で話を進めます。
- 今の年収をなるべく落とさずにキャリアアップする
- 業種(製造業)は変えずにキャリアアップする
もし、
- 「WEBデザイナーになりたい」
- 「ITエンジニアに転職したい」
など、完全に別業種に行きたいなら、そちらに一直線でOKです。
それはそれで応援したいルートです。
ここでは、
「製造の経験を活かしながら、年収を上げていきたい人」
向けの現実的なルートに絞って話します。
リスクを抑えたキャリアアップの具体的ステップ
結論から言うと、
最速かつ年収を落とさない現実的なステップアップルートはこれです。
製造(一般職)
→ 配置転換 → 保全(一般職)
→ 職掌転換 → 生産技術などの技術職・総合職
これを少し分解して説明します。
① 今の職場で「配置転換」を希望する(保全・工務へ)
一番リスクが低く、かつ食いっぱぐれないルートは、
今の会社の中で「保全(工務)」に異動すること
です。
保全は、
- 設備のメカ(機械)
- 設備の制御(電気・PLCなど)
両方に触れられる、スキルアップにはうってつけのポジションです。
もし選べるなら、
メカ or 制御 → できれば制御を選ぶ のがおすすめ。
FA・自動化の現場では、
制御(PLC、シーケンス、I/O、ネットワーク)を理解している人材の需要はとんでもなく高いです。
② 今の職場で「職掌転換」を希望する(一般職 → 技術職)
次のステップが、
一般職 → 技術職(総合職)への職掌転換
です。
会社によって呼び方は違いますが、
- 一般職(現場・ライン中心)
- 技術職/総合職(開発・設計・生技など)
のように「職掌」が分かれている会社では、
**「職掌転換制度」**が用意されているケースがあります。
この制度があるなら、積極的に手を挙げましょう。
①で保全に移って経験を積んでからの方が、
- 「設備側も分かっている人」
- 「現場を分かっている技術職候補」
として評価されやすく、
職掌転換の審査にも通りやすくなります。
③ 転職する場合:ポイントは「できるだけ大手へ」
転職を考える人もいると思いますが、
製造職のまま転職しても、年収が大きく上がるケースは少ないのが現実です。
それでも転職するなら、最低限この意識を持ってください。
「できるだけ大手に寄せる」
理由はシンプルで、
- 保全・工務・生産技術・品質保証など、
技術職へのキャリアチェンジルートが存在するのは、大手の方が圧倒的に多い
からです。
中小だと、
- ポストそのものがない
- 制度がない
- 人事がそこまで設計されてない
というケースもあります。
転職するなら、
- 「今は製造職として入るけど、将来的に保全・生技に行けそうか」
- 「職掌転換制度があるのか」
このあたりを見ておくと、将来の逃げ道の多さが変わってきます。
どんなスキルを身につければいいのか?
では、実際に何を勉強すればいいのか。
せっかくなので、
「製造経験を活かしつつ年収を上げやすいスキル」に絞って書いておきます。
制御(電気・PLC)
一番おすすめは制御(電気側)です。
イメージとしては、
- 工場で使っている設備のプログラム
- PLC(シーケンサ)のラダー図
- センサ・アクチュエータとのI/O回路
- インバータ・サーボ・ロボットの制御
こういった世界です。
制御システムや自動化技術は、
今の製造業でほぼ必須レベルの領域になっています。
- PLC(シーメンス、三菱、オムロンなど)
- 産業用ロボット
- 通信(Ethernet/IP、PROFIBUS、CC-Linkなど)
このあたりに触れるようになると、
市場価値は一気に跳ねます。
昨今の近代化・工場自動化の流れを考えると、
制御ができる人の需要は本当に「計り知れない」レベルです。
機械(メカ・設備)
次におすすめなのが機械側のスキルです。
- 設備の構造
- 機械設計
- メンテナンス・分解・組立
- CAD(2D/3D)の操作
- 故障診断・劣化予測
こういったスキルは、
トラブルシューティング力・現場対応力につながります。
制御ほど専門性の壁は高くないかもしれませんが、
学びやすく、需要も安定しているスキルです。
英語(+TOEIC)
そして、忘れてはいけないのが英語です。
グローバル化が進む中で、
- 海外製の設備マニュアル
- 海外サプライヤとのやりとり
- グローバル拠点との会議
など、技術職でも英語が関わる場面は確実に増えています。
ここで言っておきたいのは、
「ペラペラに話せる必要はない」ということ。
最低限、
- 「英語から逃げていません」
- 「必要に応じて頑張れます」
という意思表示ができればOKです。
その「意思表示」として今でも一番分かりやすいのが、
TOEICスコアです。
- まずは600点を目標にしましょう。
- 技術スキル × 英語力 が揃うと、
年収アップの伸び代はかなり大きくなります。
技術職側は「製造出身ウェルカム」な理由
ここまで読んで、
- 「今さら技術職なんて…」
- 「文系だし、理系知識もないし…」
と思うかもしれませんが、
実は技術職側は、製造出身の人をかなり歓迎していることが多いです。
理由はシンプルです。
- 現場のリアルを知っている
- 机上の設計だけでなく、現場目線で考えられる
- 作業者の気持ちが分かる
- 製造工程や段取りを理解している
こういう人は、
- 生産技術
- 保全
- 品質保証
にとってめちゃくちゃ頼りになる存在なんです。
技術を身につけたい
専門性をつけたい
もっと稼げるようになりたい
理由は何でも構いません。
- 「技術に興味を持ってくれた」
- 「製造から一歩踏み出したいと思ってくれた」
この時点で、技術職側としては大歓迎です。
まとめ:今の延長線上だけでキャリアを考えない
最後に、この記事のポイントを整理します。
- 製造職だけで年収を大きく上げ続けるのは難しい
- 30代以降、総合職との年収差は150〜200万以上開きやすい
- 自動化・技術革新により、「単純な製造作業」はどんどん置き換えられていく
- 年収を落とさずにキャリアアップする現実的なルートは
- 製造 → 保全(工務)への配置転換
- その後、職掌転換で技術職へ
- スキルとしては
- 制御(PLC・ロボット・電気)
- 機械(設備・メカ・CAD)
- 英語(まずはTOEIC600点)
この3つが特におすすめ
- 技術職側は、「現場を知っている製造出身者」を本当に求めている
今のまま製造職として働き続けるのも一つの選択肢です。
でも、
「このまま20年後も同じ働き方で、今と同じ満足度でいられるか?」
と一度自分に聞いてみてほしいなと思います。
もし少しでも不安やモヤモヤがあるなら、
今がキャリアを見直すタイミングかもしれません。
- 保全に手を挙げてみる
- 技術職への職掌転換制度を調べてみる
- PLCや英語の勉強を始めてみる
どれか1つだけでもいいので、
「製造職のまま終わらないための一歩」 を踏み出してみてください😊



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