はじめに
「やべ、ケーブルの選定ってどうやるんだっけ?」
工務・保全・生技のみなさん、
心当たりありませんか?😇
- 「いい感じの太さで入れといてください」
- 「前と同じケーブルでお願いしまーす」
みたいなノリで発注して、
- 「なんでその容量でそんなぶっといケーブル?」
- 「その負荷でその細さは怖いって…」
って後からツッコまれるパターン、結構あるんじゃないですか?
まぁぼくはよく突っ込んできた側です・・尻ぬぐいが多いので、、、、
指摘されたときに
「あ、すみません…よく分かってませんでした…」
だと、わりと恥ずかしいやつです。
ちなみに
「そんな細かいこと気にしたことないわ!」
ってOBに逆ギレされたことあります。(いや、あんたが導入した設備やろw)
なのでこの記事では、
「なぜそのケーブルを選んだのか」
を、自信を持って説明できるレベル
までをゴールにして、
電源ケーブル選定の考え方+早見表をまとめておきます。
※ここでは主に低圧(600Vクラス)動力用・電源用の話に絞ります。
※最終的には会社の内規・メーカーのカタログ・電気設備技術基準・内線規程に従ってください⚠️経済産業省+1
ケーブル選定はこの4ステップだけ!!
まず全体像から。ざっくり、ケーブル選定はこの4ステップです。
- 負荷容量からスケア(断面積)を決める
- 配線する場所の“環境”でケーブルの種類を決める
- 配線長を見積もって、必要なら太さをワンランク上げる
- 型式と長さを確定して、適切なケーブルを購入する
順番に深掘りしていきます。
STEP1:負荷容量からスケアサイズを決める
まずは 「何アンペア流れるのか」 をちゃんと押さえるところから。
1-1. 手元に「負荷電流」「最大運転電流」が書いてある場合
モータや装置の仕様書に
- 「定格電流:I = 12A」
- 「最大運転電流:Imax = 18A」
みたいに書いてあるやつですね。
その場合はシンプルに、
設計電流 = 定格電流 × 安全率(だいたい1.2〜1.3)
くらいで見ておけば現場的にはOKなことが多いです。
※もちろん会社の基準があればそっち優先!!
例:
- 定格電流 18A
- 安全率 1.25
→ 設計電流 ≒ 18 × 1.25 = 22.5A
この“設計電流”を元に、後述の 「スケア早見表」 からケーブルサイズを選びます。
1-2. 「容量 kW/W」しか書いてない場合
■ 単相負荷(100V/200Vなど)
ざっくりの式はこんな感じです:
I[A] ≒ P[W] ÷ (V[V] ×力率×効率)
- 力率と効率をまとめて「0.8くらい」と仮定して
超ざっくりやると:
I[A] ≒ P[W] ÷ (V[V] × 0.8)
例:
100Vの単相ヒーター 1kW(=1000W)の場合
→ I ≒ 1000 ÷ (100 × 1.0) = 10A(ほぼヒーターは力率1なのでそのまま)
■ 三相負荷(200V 3φモータなど)
三相の基本式は:
I[A] = P[W] ÷ (√3 × V[V] × 力率×効率)
たとえば
- 3kW
- 200V
- 力率 ≒ 0.8
- 効率 ≒ 0.9
なら、
I ≒ 3000 ÷ (1.732 × 200 × 0.8 × 0.9)
≒ 12A 弱
というイメージです。
ここまで出せれば、あとは 「設計電流」→「スケア」 に変換していくだけ。
1-3. 「VA」だけ書いてある場合
トランスやUPSなどでよくある「kVA」「VA」表記。
この場合は、
**見た目どおり“電圧で割るだけ”**です。
- 単相: I[A] = S[VA] ÷ V[V]
- 三相(3φ): I[A] = S[VA] ÷ (√3 × V[V])
例:
- 3kVA
- 三相200V
→ I ≒ 3000 ÷ (1.732 × 200) ≒ 8.7A
1-4. スケア早見表(600V CVケーブルの一例)
ここがこの記事の 「早見表」ポイントその1 です💡
600V CVケーブル(3心)の許容電流例(周囲40℃・気中布設)を
ざっくり抜粋したものがこちら👇
※実際の設計では必ずメーカーのカタログ値を確認してください。
| スケアサイズ (sq) | 許容電流の目安 (A) |
|---|---|
| 2 sq | 約 23 A |
| 3.5 sq | 約 33 A |
| 5.5 sq | 約 44 A |
| 8 sq | 約 54 A |
| 14 sq | 約 76 A |
| 22 sq | 約 100 A |
| 38 sq | 約 140 A |
| 60 sq | 約 190 A |
| 100 sq | 約 260 A |
現場的には、
- 設計電流を出す
- その値を満たすスケアを 1ランク上で 選ぶ
くらいの感覚だと、だいぶ安全寄りに設計できます。
STEP2:配線環境からケーブル種類を決める
次に、「どこにどう配線するか」でケーブルの種類を選びます。
- 屋内か屋外か
- 固定か、動く機器か
- 動力か制御か・弱電か
などなど。
まずざっくりの“環境別使い分け”から。
2-1. 環境別ざっくり使い分け
| どんな場所? | よく使うケーブル例 | ポイント |
|---|---|---|
| 低圧動力の幹線・盤〜大型機器 | CV, CVT | 耐候性○・屋外OK・動力用の定番 |
| 工場内の制御盤〜機器の制御配線 | CVV(制御用) | 600V制御回路用・多芯構造・制御配線向き |
| 住宅・事務所の屋内配線(コンセント等) | VVF | 一般住宅の屋内配線のド定番 |
| 盤内配線・短い渡り配線 | IV | 600V以下・盤内・器具間の渡り線など |
| 移動する機器の電源・工場内の機器 | VCT/VCTF(キャブタイヤ) | 柔らかい・耐油・耐水性が高く移動機器向き |
ここからさらに、各線種を簡単に整理しておきます。
STEP3:配線長を見積もる(電圧降下もざっくり意識)
次に忘れがちなのが 「配線長」 です。
- 盤からすぐそこ(10mとか)→ ほとんど気にしなくてOK
- 50m、100m、200mと伸びてくる → 電圧降下 を意識する
日本の内線規程では、低圧配線の電圧降下は
原則として「幹線2%以下・分岐2%以下」が推奨です。
毎回ガチ計算してもいいですが、ここでは選定の理由を言えるレベルなので
- 配線長が長い(ざっくり50〜60m超え)
→ 1ランク太いスケアにしておく - モータ起動がシビアなライン(負荷100%が懸念される)
→ 1ランク太いスケアにしておく
真面目にやるなら、電圧降下の式からちゃんと計算しますが、
この記事では「迷ったら1ランク太く」がコンセプトなので、
詳細計算は割愛します。
STEP4:適切なケーブルを購入する(線種早見表)
最後に、
「どの線種を買うか」問題 を早見表で整理しておきます。
「CV、CVT(3C)、CVV、VCT、VCTF、VVF、IV」あたりは
電気屋、制御屋ならよく見る顔ぶれですよね。
4-1. 主要ケーブルざっくり早見表(低圧編)
※代表的な例です。メーカーや規格・サイズによって詳細は異なります。
| 種類 | 名称 | 絶縁体 | シース | 規格 | 用途 | 価格目安 | 備考 | 代表的なメーカー例 |
| CV | 架橋ポリエチレンビニルケーブル | 架橋ポリエチレン | ビニル | 低圧 高圧 | 電力 屋外可 | 340円/m ※22sq-8C | 2sq~選べる | 住電HST、フジクラ |
| CVT(3C) | トリプレックス架橋ポリエチレンビニルケーブル (単心3本よりあわせ) | 架橋ポリエチレン | ビニル | 低圧 高圧 | 電力 屋外可 | 350円/m ※22sq-8C | CVに比べ①軽量②同サイズでも許容電流量が大きい③曲げやすい ※14sq~のみ | 住電HST、フジクラ、昭和電線 |
| CVV | 制御用ビニル絶縁ビニルシースケーブル C:Control-useの意 CVVS:シールド付き | ビニル | ビニル | 低圧 屋内 | 制御用 | 200円/m ※1.25sq-8c | ※CVT,CVと関係性なし | 住電HST、フジクラ |
| VCT | ビニルキャブタイヤケーブル | ビニル | ビニル | 低圧 AC600v DC750v | FA機器 移動用 | 282円/m ※1.25sq-8c | 柔軟性・耐水性・難燃性あり、移動用 低圧のみ使用可 VCTFより被覆が厚い | 富士電線 |
| VCTーF | ビニルキャブタイヤコード | ビニル | ビニル | AC300v以下 | FA機器 移動用 | 212円/m ※1.25sq-8c | 耐燃性あり VCTより被覆が薄い | 富士電線 |
| VVF | ビニル絶縁ビニルシースケーブル 三文字目=F:平型 R:丸形 | ビニル | ビニル | 低圧 AC600以下 30A程度 | 照明・コンセント 一般家庭 | 150円/m ※2.0sq-3c | 直射日光・耐久性に弱い | 富士電線、矢崎エナジー、住友HST |
| IV | indoor PVC K:柔軟性 I:絶縁電線 V:ビニル電線 | ビニル | ― | 低圧 | 屋内 | 17円/m ※1.25sq-単芯 | バラ線 | 住電HST、矢崎エナジー、他多数 |
※価格は 2025年時点のオンラインショップ相場をざっくり眺めた感覚値 です。
銅相場・ロット・芯数・メーカーでかなり変動するので、あくまで「相対的な高さのイメージ」として見てくださいね。
まとめ:正解はひとつじゃない。でも「理由を言える」ことが超大事
ケーブル選定って、
正直 「絶対こうじゃなきゃダメ!」という一意の正解がない 世界です。
- 許容電流
- 電圧降下
- 施工性
- コスト
- 今後の増設余地
いろんな要素を見て、
「じゃあ今回はこれにしよう」 と決めていくのが実務。
だからこそ大事なのは、
「なぜそのスケア・線種を選んだのか?」
を、自分の言葉で説明できること。
- 「負荷電流が○Aで、安全率見込んで×A。
だからこのメーカ早見表のこの行で、○sqを選びました」 - 「配線長が△mあるので、電圧降下を見て1ランク上げてます」
- 「この環境は屋外露出なので、VVFじゃなくてCVでいきます」
ここまで言えれば、
マネージャーや検討メンバーとの会話の質も一気に変わります💡



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