まず言わせて「NFBは三菱の商品名ですから!」
ども、自己紹介は今回も割愛します。
この記事は、
- 工場で働く 工務・保全・生技の皆さん
- これから現場デビューする 駆け出し電気屋さん
向けに書いています。
「なんでそのブレーカ落ちてるの?」問題、くらってません?
以前、工場で漏電トラブルがあって保全と一緒に対応したんですが…
本来なら 負荷直下のブレーカで保護協調 を取りたいじゃないですか。
ところが、
- 負荷側には漏電遮断器付き
- なのに 一次側のブレーカの方が許容値小さい
- 結果:一次側が先にトリップしてて 意味ないやないかい!
みたいな構成になってたことがありまして。
他にも、
- いつの間にかモータ容量だけ上げられてる
- なのに ブレーカは元のまま
- 「これ定格電流ギリギリやん…そのうちトリップするやろ…」
みたいな“闇改造案件”、現場あるあるじゃないですか。
で、翌朝のミーティングで上司からお決まりの一言。
「なんでこうなってるの?」
いやいや、知らんがな。これやったOB呼んできてよ。
…なんて言えるはずもなく、
「いったん調べます」
としか言えないわけです。
調べた結果:
- 理由:特になし(=選定ミス)
- 本質的な原因:知識不足&改造時の検証不足
ってところに行き着くのは分かりきっているので、
「もういいからこっちで対策しちゃおう…」ってなるやつですね。
ちなみに「NFB」は正式名称じゃないです
ここでひとつ、電気屋あるあるを。
「ここはNFBで」
「この盤、NFB足りないんで追加したいです」
って普通に会話で出てきません?
これ、実は三菱電機の製品名称由来です。
「ノーヒューズブレーカ(No-Fuse Breaker)」は三菱の呼び名で、
国際的・規格的には MCCB(Molded Case Circuit Breaker:配線用遮断器) と呼ばれます。
電気・制御の世界でちゃんと仕事してる人(仕事できる人)で、
ガチの場面で「NFBで」って言う人、あまり見ません。
- 正式:MCCB(配線用遮断器)(漏電付き:ELB(漏電遮断器))
このへん、用語はスッキリさせておくと 「分かってる感」 が出ます。
※あっ、あと「シーケンサ」もね。あれは三菱の商品名で、正式には PLC です(笑)
この記事で目指すゴール
「ブレーカ選定?メーカに丸投げでいいっしょ」
…とならないために、
- 最低限おさえておきたい ブレーカ選定の考え方
- 保護協調的にアウトな構成 を見抜ける視点
- メーカーごとの 代表的シリーズ名
ここまでをサクッと理解してもらうのがゴールです。
新規設計よりも、現場だと多いのは
「改造するけど、この負荷でこのブレーカ大丈夫なんだっけ?」
というケースですよね。
まず“初動”でやること
ブレーカ選定の前に、まずはここを固めましょう👇
電圧はいくつで、定格電流はどのくらい流れる負荷か?
- 単相?三相?
- 電圧はいくつ?(AC100V / 200V / 400V…)
- モータ容量・ヒータ容量は?
- 定格電流・最大電流はいくつ?
このあたりの整理は、
以前の記事「電源ケーブルの選定」と同じノリでOKです。
ブレーカ選定 4+1ステップ
実務でよく使う流れはこんな感じです👇
- 短絡電流を確認する
- 漏電遮断式(ELB)にするか決める
- 定格電流と電圧からブレーカ容量を決める
- 盤内に収まるサイズか確認する
- メーカーとシリーズをざっくり押さえておく
ひとつずつ、現場目線でサクッと深掘りします。
STEP1:短絡電流を確認する(ここサボると危ない)
まずは**短絡電流**のチェック。
「計算式見たけど、インピーダンスが云々で意味わからん…」
という人も多いと思います。
ちゃんと計算するなら電気主任技術者レベルの知識が必要ですが、
実務的には “メーカーのカタログに載っているグラフ”を使うのが現実解です。
例えば三菱電機だと、低圧遮断器の総合カタログに
変圧器容量・配線長から短絡電流を読める 「短絡電流早見表」 が付いています。
↓三菱なら以下のカタログ↓
Y-0701Y 2412 項目10.付録 8.短絡電流の計算 「短絡電流早見表」参照
- 変圧器の容量(kVA)
- 二次電圧
- 幹線の太さ・長さ
あたりを考慮して、ブレーカの遮断容量が足りているか を確認するイメージです。
変圧器容量って何?
→ そのブレーカの“親”になっているトランスの容量のことです。
分からなければ電気主任 or 設備担当に聞きましょう。
STEP2:漏電遮断式(ELB)にするか否かを決める
次に 「MCCBだけでいいか」「ELBにするか」 を決めます。
個人的な結論としては:
保全性を考えるなら、基本は負荷側は漏電遮断(ELB)にしておいた方がいい。
■ ただし例外:低圧トランス一次側
低圧トランスの一次側については、
- 目的:トランスそのものを短絡から保護したい
- 漏電・過負荷は基本的に 二次側で検知 する設計
という思想なら、
一次側は MCCB(ノーヒューズ遮断器)だけ でもOKです。
では、トランス〜盤主電源までの漏電はどこで見るのか?
→ 盤の 主幹ブレーカをELB にする、という構成がよく使われます。
このときは、主幹ELBの感度を二次側より鈍く するのが鉄則です。
- 主幹:ELB 100mA
- 二次側・支線:ELB 30mA
みたいな感じで、
主幹ELB > 二次側ELB
の関係になるようにして、
保護協調をとります。
■ 雨漏り系の漏電は「負荷ごとELB」が圧倒的に楽
工場でよくある漏電パターンが 雨・結露・湿気。
- 盤に漏電遮断器が入っていない
- 負荷ごとELBが入っていない
こういう構成だと、
主幹が一発でトリップして、復旧が大変になります。
そうなるとどうなるかって言うと
- 幹線・分岐ごとに順番にメガー当てていく
- 怪しそうな回路を切り分けながら追い込んでいく
…という 時間泥棒コース まっしぐらです。
しかも、雨漏り系の漏電あるあるとして、
「朝一は絶縁悪かったのに、昼には乾いてメガOK」
みたいなことも普通にあります。
負荷ごとにELBが入っていれば、
どこで漏電が起きているか一発で分かる ので、復旧時間が全然違います。
STEP3:定格電流と電圧からブレーカを決める
ここでようやく、ブレーカ本体の容量選定の話です。
考え方は大きく2パターンあります。
① ブレーカで負荷を直接保護する場合
- モータや負荷側にサーマルリレーがない
- ブレーカに過負荷・短絡保護を任せる
この場合は、
負荷の定格電流 ≒ ブレーカの定格電流
で選定するイメージでOKです。
定格という言葉の意味は
「これ以上は流しちゃダメなライン」なので、
- 定格20Aの負荷 → 20AのMCCB(or ELB)
という素直な選び方になります。
② サーマルリレー・電子サーマルで負荷を保護する場合
- モータ保護用サーマルリレー
- インバータの電子サーマル
などで 負荷側の保護は別にやる 場合は、
ブレーカはもう少し“余裕を持たせた”選び方になります。
ブレーカ定格 ≒ 負荷定格電流の 1.2〜1.5倍
くらいにしておくと、
起動電流や一時的な負荷変動で いちいちブレーカが飛ぶのを防げます。
AF(アンペアフレーム)は“ワンランク上”を選ぶ
AF(Ampere Frame)は「そのブレーカ枠自体の最大定格」のことですが、
定格電流=AF ピッタリ はあまりおすすめしません。
理由はシンプルで、余裕がなさすぎるから です。
- 負荷定格 40A
- ブレーカ定格電流 40A
- AFも40AF
みたいにガチガチに合わせるより、
AFはワンランク上(60AFなど)にしておく
ほうが、定格いっぱいまで電流が流れた場合でも故障の心配がありません。
STEP4:盤内に収まるサイズか確認する
これ、地味にやらかしがちなポイントです。
よくあるパターン:
- 改造でブレーカ容量を1ランク上げる
- いざ現場で載せ替えようとしたら
→ 「盤に物理的に入らない」
- 奥行きが足りない
- 横幅が足りない
- 盤扉が閉まらなくなる
こうなると、
その場で小一時間うなだれることになります。
改造前に、
- 盤内レイアウト
- レールの空きスペース
- 奥行き寸法
あたりをざっと確認しておくと安心です。
STEP5:各社ブレーカシリーズ名もざっくり知っておこう
最後に、代表的なメーカーとシリーズ名も軽く押さえておきましょう。
「どのシリーズにするか?」をサッと言えると、
メーカや商社との会話がスムーズになります。
■ 三菱電機(Mitsubishi Electric)
三菱は、いわゆる「NFB」の元ネタメーカーです。
- 配線用遮断器(MCCB)
- WS-Vシリーズ(現行の低圧遮断器シリーズ)
- NFシリーズ(NF-S / NF-Cなど、ノーヒューズ遮断器として流通)
- 漏電遮断器(ELB)
- NVシリーズ(NV-S、NV-Lなど)
※実際の型式選定は、カタログの仕様表・遮断容量・オプションを要確認。
■ 富士電機(Fuji Electric)
富士は「オートブレーカ」という呼び方が強めです。
- 配線用遮断器(MCCB)
- G-TWINシリーズ/G-TWIN Λシリーズ(一般配線用グローバル品)
- BWシリーズ(一般配線用オートブレーカ)
- 漏電遮断器(ELB)
- G-TWINシリーズの漏電タイプ
- 電気工事用D/DGシリーズ(分電盤向け)
■ 日東工業(NITTO)
日東は盤メーカーのイメージが強いですが、
自社ブランドのブレーカもラインアップされています。
- サーキットブレーカ(MCCB相当)
- NEシリーズ(NE, NE-C, NE-S:協約形・経済形・汎用形)
- NXシリーズ(スリムサーキットブレーカ)
- 漏電ブレーカ(ELB)
- GEシリーズ(GE, GE-C:経済形・協約形)
メーカーの選び方としては、
- 既存設備で一番多く使われているメーカに合わせる
- 取引先・在庫状況的に「すぐ手に入るメーカ」を優先する
このあたりを意識すると、
保全性の高い構成 にしやすいです。
まとめ:ブレーカ選定は「丸投げしないための最低限」を持っておこう
この記事のポイントをサクッと振り返ると👇
- NFBは三菱の商品名。正式名称は MCCB(配線用遮断器)
- ブレーカ選定は、
- 短絡電流の確認
- ELBにするかどうか決める(保全性を意識)
- 定格電流・電圧から容量を決める
- 盤内スペースを確認する
- 負荷直下は、できるだけ 負荷ごとELB にしておくと保全部門が泣かない
- サーマル保護が別にあるなら、ブレーカは定格の1.2〜1.5倍余裕を持たせる
- メーカー&シリーズ名(Mitsubishi / Fuji / Nitto)をざっくり知っておくと会話が速い
ブレーカ選定に「完璧な唯一解」はありません。
でも、
「こういう前提だから、このMCCB/ELBを選びました」
と 自分の言葉で説明できるかどうか が、
現場の信頼につながるところだと思っています。



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