モータはざっくり2種類:PMモータとインダクションモータ
モータの世界って、用語だけでも
- サーボモータ
- ステッピングモータ
- ブラシレスDCモータ
- インダクションモータ
- シンクロナスモータ
……などなど、やたら種類が多く見えますが、
ざっくり物理的な原理で見ると2種類にまとまります。
- PMモータ(Permanent Magnet Motor)
→ 永久磁石を使って回転子の磁界を作るタイプ - インダクションモータ(誘導電動機)
→ 誘導で電流を流し、回転子に磁界を発生させるタイプ
まずはこの2分類を頭に置いておくと、
サーボ・ステッピング・ブラシレスなどを整理しやすくなります。
PMモータの代表例:サーボ・ステッピング・ブラシレス
では、それぞれの「中身」をもう少しだけ分解します。
①PMモータとは
PM(Permanent Magnet)という名前の通り、
回転子側に永久磁石が入っているタイプのモータです。
代表的なものはこのあたり:
- サーボモータ(ACサーボ、DCサーボ)
- ステッピングモータ
- ブラシレスDCモータ(BLDC)
細かい分類をすべて書くと長くなるので、
ここでは「現場でよく使う3つ」に絞って整理してみます。
②サーボモータ
特徴:位置・速度・トルクを高精度に制御できるモータ
- 基本はPM(永久磁石)同期モータ
- ドライバ(サーボアンプ)+エンコーダがセット
- クローズドループ制御(位置・速度フィードバック)前提
用途:
- 産業用ロボット
- 搬送装置の位置決め(コンベア停止位置、ピック&プレースなど)
- 加工機の送り軸、回転軸
- 高速・高精度な位置決めが必要なところ
③ステッピングモータ
特徴:電気的に1パルスで動作する角度(ステップ角)を決めているモータ
- 基本PM系
- パルス数で回転角度を決める
- オープンループで使われることが多い (というかクローズドを私は見たことがない)
用途:
- 小型の位置決め(プリンタ、3Dプリンタ、簡易XYステージ)
- トルク・速度よりも「手軽な位置決め」が優先される箇所
- サーボよりもモータ径が小さく自動機に設置しやすい
④ブラシレスDCモータ(BLDC)
特徴:ブラシレス構造
- 回転子に永久磁石、固定子側にコイル
- ブラシ(機械的接点)がないため、寿命が長い&ノイズが少ない
- インバータや専用ドライバで駆動
用途:
- ファン・ブロワ
- 小型ポンプ
- サーボ用途ほどではないが、ある程度制御性が必要な回転機
インダクションモータとは?工場で一番見る“あのモータ”
もう一方の大分類が インダクションモータ(誘導モータ) です。
特徴:
- 回転子側には基本的に永久磁石は使わない
- 固定子側の回転磁界によって、回転子に誘導電流が流れる
- その誘導電流による磁界と、固定子の磁界の相互作用で回る
用途は超広範囲:
- ファン、ポンプ、送風機
- コンベア
- 各種産業機械の駆動軸
- エアコンのコンプレッサー etc.
メリット:
- 構造が比較的シンプル
- 頑丈で壊れにくい
- 大出力にも対応しやすい
- コストも比較的安い
デメリット:
- 単体では速度制御の自由度が低い
- 高精度な位置決め制御には向かない(インバータ+ベクトル制御+エンコーダF/Bなどで工夫は可能)
オープンループとクローズドループの違い
次に、多くの人がごちゃっとしやすい
オープンループ(開ループ) と クローズドループ(閉ループ) の話です。
①オープンループ制御
定義:
- 出力(結果)を見返さずに、入力だけで制御する方式
モータで言えば:
- 「このパルス数を出したから、理論上は○度動いたはず」
- 「この周波数で駆動しているから、回転数はこのくらいのはず」
といったように、“はず” で制御している状態です。けっこう「だろう制御」って呼んでます
代表例:
- オープンループのステッピングモータ
- インバータで回転数だけ指定して回すインダクションモータ
②クローズドループ制御
定義:
- 出力(結果)をセンサなどで計測し、その情報をフィードバックして入力を調整する方式
モータで言えば:
- 目標(位置・速度・トルク)を指示
- 実際の状態をエンコーダなどで計測
- 誤差(目標 − 実測)をもとに制御量を修正 ※重要!!!
- 誤差を小さくするように制御を続ける
代表例:
- サーボモータ(位置・速度・トルク制御)
- クローズドループステッピング
- 一部の高機能インバータ+エンコーダフィードバック
ここで重要なのが、次のポイントです。
「エンコーダが付いてる=クローズドループ」じゃない問題
個人的に一番強調したいのがこれです。
エンコーダの値をフィードバックしている=クローズドループではない!!
ここ、勘違いしている人を本当によく見かけます。
①フィードバックしている“だけ”の状態
エンコーダを付けていても、
- ただ位置や速度をモニタリングしているだけ
- エンコーダの値をログに残しているだけ
- GUI画面に「今の位置」「今の速度」を出しているだけ
この状態は、制御としてはオープンループです。
なぜなら、
- 出力(実際の動き)を制御量に反映していないからです。
②クローズドループと呼べる条件
クローズドループと言えるのは、
フィードバックした値を元に、再補正するロジックが組まれている状態
です。
たとえばサーボモータなら、
- 指令パルスと実際のエンコーダパルスを常に比較
- 誤差があれば、トルク・電流指令を増減して追いつかせる
- オーバーシュートしないように制御ゲインを調整する
といったフィードバック制御の仕組みが入っています。
つまり、
- ドライバ(サーボアンプ・ステッピングドライバ)
- エンコーダ
- そのエンコーダを使って誤差を潰していく制御ロジック
この三位一体で初めて、
「クローズドループです」と胸を張って言えるわけです。
モータ選定のポイント:どの方式を選べばいい?
では、モータの種類と制御方式を踏まえて、
どう選定すればいいかのざっくりした目安も書いておきます。
①ざっくり判断基準
- 単純に回っていればよい/大出力が欲しい
→ インダクションモータ+インバータ(または直入れ) - ある程度の速度制御ができればOK
→ インダクションモータ+インバータ制御
(V/F制御・ベクトル制御など) - 簡易的な位置決め、コスト重視
→ ステッピングモータ(オープンループ)
(負荷トルク・加減速条件に注意) - 高精度な位置決め・速度制御が必要
→ サーボモータ(クローズドループ制御) - ファン・ポンプなどで省エネ+長寿命が欲しい
→ ブラシレスDCモータ(BLDC)
②オープンループを選ぶ時/避ける時
オープンループで十分なケース:
- 負荷変動が少ない
- ロストステップしても問題が小さい
- 位置決め精度がそこまで要求されない
オープンループを避けた方がいいケース:
- トルク変動や負荷変動が大きい
- ロストステップが即NG(品質・安全に直結)
- 長距離の位置決め、加減速がシビア
このあたりを事前にイメージしておかないと、
- 「ステッピングでいけるっしょ」と思って設計
- 実機でロストステップ多発
- 結局サーボにリプレースして二度手間・コスト増
という、ありがちな沼にはまります。
代表的なモータメーカー
最後に、現場でよく名前を見る代表的なメーカーも挙げておきます。
三菱電機
- サーボモータ(MRシリーズ)
- インバータ・インダクションモータ
- FA全体との親和性が高く、制御盤〜PLC〜サーボまで一気通貫で揃えやすい
住友(住友重機械工業など)
- ギアモータ
- 減速機一体型モータ
- 搬送・コンベア・ポンプなど、産業用途での実績多数
オリエンタルモーター
- ステッピングモータ
- 小型サーボ・ブラシレスモータ
- 小型機器の位置決めやファン・送風など、細かい用途に強い
安川電機
- サーボモータ
- インバータ
- ロボット用駆動、各種産業機械向けサーボシステムなどで実績多数
メーカー選定のポイントとしては、
- 既存設備で一番多く使われているメーカー
- 社内にノウハウや予備品があるか
- 取引ルート・納期の安定性
あたりを見て決めると、
保全性・立ち上げの楽さ の面でだいぶ差が出ます。
まとめ:モータの種類と制御方式をセットで理解しよう
最後に、この記事の内容をまとめます。
- モータはざっくり PMモータ / インダクションモータ の2種類
- PMモータ側に属するのが、サーボ・ステッピング・ブラシレス
- インダクションモータは、ファン・ポンプ・コンベア等で一番よく見る“あのモータ”
- オープンループは「出力を見返さない制御」
クローズドループは「フィードバックして再補正する制御」 - エンコーダの値を読んでいるだけではクローズドループではない
- クローズドループと呼ぶには、
ドライバ+エンコーダ+誤差を潰す制御ロジックが揃っている必要がある
※ただし三菱が出しているセンサレスサーボは例外 - モータ選定は
「必要な精度」「負荷変動」「コスト」「保全性」あたりを軸に
サーボ/ステッピング/インダクション/ブラシレスを選ぶ
モータの型番を覚えるよりも前に、
- どの物理原理で動いているか
- どの制御方式(オープン/クローズドループ)なのか
ここが掴めていると、
カタログを眺めたり、メーカーと話すときの解像度が一気に上がります。
この記事を、
「モータの種類と制御方式を整理するためのベース」にしてもらえたらうれしいです😊
次は各メーカごとに型式もまとめていきたいと思います。では👋



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