この記事の対象になる方
- 工場のIoT化、DX化で「見える化」を進めたいエンジニアの方
- 現場を見たときに「何から準備すればいいんだ?」と迷子になっている方
- ネットワーク機器や電源の「理想のハード構成」が分からない方
- ひたすらにLANケーブルを引き、100V取得先に困っている人
理想形とはどのような形を言うのか
ここでいう理想形とは、ネットワーク・機器・配線・電源のすべてにおいて分離し独立していることを指します。
理想図を見る前に登場人物を予習しましょう。
理想形に出てくる登場人物
- ロードセンター:電源の元電源。分電盤の最上位といった位置づけ。
- サーバー室:エッジPCやデーターサーバーと言った脳みそを取り扱う部屋。
- MCCB:通常のノーヒューズブレーカーを指す
- ELB:漏電遮断機のことを指す
- サーバーラック:サーバーやエッジPCと言った保存や処理を行う機器を補する場所
- 大容量HUB/HUB:LAN口のネットワークを分けるための機器
- メディコン(MC):メディアコンバータと言いLAN⇔光に変換する機能をもつ
- 光成端箱:光ファイバと光ファイバを溶着し収納する箱
- 分電盤:電源を配電するための盤。MCCB、ELBが設置されている。
- ネットワーク盤:工程ごとにデータ収集用のエッジPLC等が設置されている盤
理想形の構成図
はい!筆者が理想とする構成図はこちらです↓

これを見て「あーなるほど、そうだよね」って思う人はこの図だけで十分です。ありがとうございます。

でも全員がそうじゃないんです。
手探りで進めてきた方もいるでしょう。
そんな方の為にもメリットをはっきりさせたうえで一つずつ確認していきましょう。
理想形は3つの要素で成り立つ
理想形は次の3つの要素で成り立つと考えています。
①電源の独立

工程の盤改修、設備停止、オフィス用のコンセント電源の遮断。工場では珍しくありません。
ここにIoTが同じ電源にぶら下がっていると、「止めたいのは工程だけなのに、IoTまで道連れ」になります。
当たり前のように見えて「あるある」です。
一度、IoTネットワークをすでに引かれている皆さん、電源系統はどこからきているか把握していますか?依頼した業者の方が「最寄の100vから取りました!」なんてこと、よくあります。
大事なのは
見える化(IOT)は工程でいかなる異常が起きようと、見えるようにしておくこと
理想形では、IoTに付随する機器(ネットワーク機器、エッジPLC等)を工程とは別の電源系統で持ちます。さらに万が一の停電に備えUPSを噛ませると、短時間の停電・瞬低でもログが残ります。
もちろん工程機器そのものが止まれば、当然ながら「新しいデータ」は取れません。
それでもIoT側が生きているメリットは大きいです。
- 止まった「瞬間」までのログが残る(直前の値、通信断の順序が追える)
- どのエリアが落ちたのかネットワーク監視で見える(復旧の当たりが付く)
- 盤改修などの作業中も、IoT側の機器状態が維持される(再立上げが楽)
②ネットワークの独立

IoTは便利ですが、ネットワーク構成もやり方を間違えると工程側に大迷惑をかけます。
代表例はこれです。
- 工程PLC間の既存デバイスですべてを完結しようとしてスキャンが重くなる
- 工程PLCと同一ネットワークにエッジPLC、監視PCもぶら下げることで全ての通信が重くなる
- IoT側のネットワーク工事で誤って工程側のLANを遮断してしまう人的ミスにつながる
だからこそ、工程LANとIoT-LANは分離し設計する。
用途が違うネットワークはIPアドレス上で分けるだけでなく、ハードも分けて設計すべし
実装のポイントは次の通りです。
- 工程側のIPは192.168.~、IoTは10.~のようにプライベートIPを明確に分ける。
- 工程PLCは読み取り用の公開メモリを作り定期で更新する
- エッジPLCは公開メモリの値を読み取るだけにする
- エッジPLCと工程PLCにハンドシェイクは極力設けない
結果として、仮にIoT側で何か起きても、工程側は平常運転を続けやすくなります。
③光ケーブルを活用

工場が広くなるほど、LANの「100m問題」が効いてきます。
「え、100mってなんですか・・・・?」
そんなあなたへ
LANケーブルで安定通信できる上限が決まっているんです。一般的に100mと。。。
「おいおい、工場なんてディズニーランド級に広いのに100mなんて目の前よ。。。」
そう、つまり50m~80mに一回はHUBを挟んで延長させたいよね!ってわけです。
中継HUBをひたすら設置すれば可能ですが、増やし方を間違えると、電源・管理・故障箇所の特定で地獄になります。
理想形は「中継ハブを置かない」ではなく、「通信方法の考え方を変える」です。
具体的には、工程間や建屋間の長距離は、最初から光を前提にして設計します。
- サーバーの拠点から建屋まで初めから光へ変換し敷設する
- 建屋から各工程までも光で敷設する
- 工程から初めてLANへ戻すか、光で距離のある場所までさらに引くか検討する。
100m制約をHUBの中継で無理やり突破すると、電源切り替えや保全性で痛い目をみるので注意
失敗を裏返して言うとこうなる(中継HUB電源・改修で断線の回避)

ここからは「ダメな例」をそのまま書くのではなく、
“裏返し=やるべきこと”として整理します。
中継HUBの電源は「適当なAC100V」から取らない(専用電源・表示・管理)
一番危ないのは、ネットワークをつなぐためだけに中継HUB(スイッチ)を置き、電源をその場のコンセントから取ってしまうことです。
工場だと、そのコンセントがどの盤・どのブレーカ配下か、後から追えないことが普通にあります。
中継HUBの電源は「後から探せない場所」に刺した瞬間、将来のトラブルが確定します。
ざっくり描くとこんな感じです

絵で描くと、「そんなばかな・・(笑)」ってなるかもしれませんが、気づいたらこうなってた。なんてことも見たことあります。
工程Cの改造を休憩時間に行う ➡ 電源断 ➡ 工程A,Bがつながらずに途中停止
なんてことが容易に想像つきますね(笑)
対策はシンプルです。
- 中継ポイントは「電源の出どころが明確」な場所に限定する(盤内、指定分電、設備電源)
- 電源系統を図面と現場表示に残す(ラベル、回路番号、分電表の紐付け)
- できればIoT系は専用の電源を敷設し取得する
建屋改修でコンセントを落としても「工程間ネットワークが死なない」構成にする
これ、あるあるです。筆者も苦労したタイプのトラブル。
「建屋の改修でコンセント電源落としたら、工程間のネットワークつながらなくなりました…」
しかも、どこのコンセントが原因か見つけるのに時間がかかる。これが一番つらい。

ここを避けるには、工程ネットワークを“設備”として扱う必要があります。
- 工程間・建屋間をつなぐ幹線は、コンセント運用にしない(盤・分電・UPS)
- コア/中継機器の設置場所を固定し、変更時は手順化する
- 監視(IoT)を入れて「落ちた場所が分かる」状態にする
ネットワークが工場のインフラになった瞬間から、電源と管理は設備品質が求められます。
現場で実装しやすい設計手順(生技・保全が動けるレベル)
前項のポイントを踏まえて、現場で実装するときの手順を上から順に整理します。
1. ゾーン設計(工程LAN/IoT-LAN)を先に決める
最初に「どこまでが工程で、どこからがIoTか」を線引きします。
これが曖昧だと、後から配線も運用も崩れます。
さらにLANの色まで分けることができればグッド👍
2. 電源方針(専用系統+UPS)を決めてから配線を敷設する
ネットワークは通信も大事だが「電源」も大事!!
IoT機器の電源は、最初から指定場所(盤・分電)で固定する。
3. 幹線は光を基本にして、100m問題を設計で消す
建屋間、工程間、長距離は光。これを「基本方針」にすると中継ポイントが減り、保全が楽になります。
4. 収集はゲートウェイ集約(工程側への直接アクセス最小化)
PLCへ直接アクセスする端末が増えるほど、工程側のリスクが増えます。
代表窓口を作って、そこに集約します。
5. 図面・ラベル・監視までセットで完成とする
ネットワーク機器は「置いたら終わり」ではなく「管理できて完成」です。
故障箇所がすぐ分かる仕組みが、保全工数を一番削ります。
最後に重要事項を再まとめ
①電源の独立
IoTの中継機器は「適当なコンセント運用」にしない。電源系統と設置場所を固定し、表示と図面に残す。
②ネットワークの独立
工程LANとIoT-LANは分離し、だれが見ても分かりやすくハードで分ける。
③光ケーブルを活用
100m制約は中継でごまかさず、幹線(光)で設計として解決する。
本記事は学習目的の情報提供です。実際の電気工事・設計・配線・機器選定・部材選定・改造は、法令・社内基準に従い、有資格者および責任者の管理下で実施してください。現場条件により最適解は変わるため、必ずメーカー仕様書・設計基準・安全規程・JISを確認のうえ判断してください。


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