はじめに:国内インバータメーカー、どれを選べばいい?
結論から言いますが、
使用しているモーターが「何か」によります。
使用しているモータのメーカーがインバータを発売している場合
これは断然同じメーカーをお勧めします!!
メンテ性やメーカーサポートも受けやすいからです。
使用しているモータのメーカーがインバータを発売していない場合
この場合は悩ましいですが、カタログを確認し他社製モータの使用がOKのものを使用しましょう。
またインバータ化を機にモータも更新することを検討しましょう!!
さて、
工場や設備の省エネ・速度制御には欠かせない「インバータ」。
ただ現場目線で見ると、
- 「高機能型・汎用型って何が違うの?」
- 「そもそもインバータに変えると、なんで省エネになるの?」
という疑問がつきまといます。
この記事では、
- 国内主要インバータメーカーと代表機種のざっくり一覧
- 直入れ運転とインバータ運転で、なぜ電力が変わるのか
- 「インバータ化すれば何でも省エネになるわけではない」ポイント
を、生産技術・保全目線でシンプルに解説していきます。
国内産業用インバータ主要メーカー一覧
早速ですが代表的な国内メーカーと、よく使われる高機能型/汎用型のシリーズを整理しておきます。
皆さんベンチマーク好きですよね。表を参考にぜひ商社、メーカーへ問い合わせしてみてください。
(※詳細仕様は各社カタログを確認してください)
国内産業用インバータ主要メーカー一覧
| メーカー | 高機能型インバータ | 汎用型インバータ |
|---|---|---|
| 三菱電機 | FREQROL-A800 | FREQROL-E800 |
| 安川電機 | GA700 | GA500 |
| OMRON | 3G3RX2 | 3G3MX2-V2 |
| 富士電機 | FRENIC-VG | FRENIC-MEGA(G2) |
| 東芝産業機器システム | VF-AS3J | VF-S15 |
| 日立産機システム | SJシリーズ P1 | WJシリーズ C1 |
※2025年12月時点の情報をもとに作成
ざっくり言うと、
- 高機能型:位置決め・高精度トルク制御・ネットワーク対応など、制御まわりがリッチなタイプ
- 汎用型:ファン・ポンプ・コンベアなど「とりあえず回したい」用途向け
というイメージで押さえておけばOKです。
なぜインバータを使うと省エネになるのか?
ここが現場でもよく聞かれるポイントです。
「三相モータを直入れしていた設備をインバータ化すると、
なぜ省エネになるのか?」
すごくざっくり言うと、
“本当に必要な回転数・トルクだけ出すようにできるから”
です。
直入れ運転の場合:
- 商用電源 50/60Hzで、モータはほぼ「全力仕様」になっている
- 実際のラインでは、機械側の減速比やダンパ・バルブで“無理やり調整”している
インバータ運転の場合:
- 周波数と電圧を落としてあげることで、
モータ側の出力をそもそも必要な分だけにする
ので、そのぶん電力も下がります。
直入れ運転とインバータ運転の比較例
イメージしやすいように、簡単な数値で比べてみます。
(実際の現場では効率・負荷条件でもう少しブレますが、考え方のイメージとして)
ケース1:三相モータを直入れで動かしている場合
- 定格容量:5.5kW
- 電源:三相AC200V
- モータ定格回転数:1500rpm
- 実際の機械側:減速比 1/2 で 750rpm で使用
- 力率・効率の合成:0.9 と仮定
- モータに流れている電流:仮に 10A とします
このときの入力電力はおおよそ、
200V(電圧) × 1.73(三相) × 0.9(力率・効率) × 10A(電流)
= 約3kW
と考えられます。
モータは定格に近い電圧・周波数が印加されているので、
機械側で回転数を落としている分は“ロスが多い”世界になりがちです。
ケース2:インバータで回転数を落として使っている場合
同じ5.5kWモータを、インバータで
- 回転数:750rpm相当(定格の約1/2)
- 周波数:定格の約1/2
- 電圧:周波数に比例して約1/2(100V相当)
になるように制御したとします。
100V(電圧) × 1.73(三相) × 0.9(力率・効率) × 10A(電流)
= 約1.5kW
となり、入力電力はおおよそ半分程度になります。
実測するとここまできれいな数字にはなりませんが、
- 回転数を半分に落として
- それに合わせて電圧も半分にし
- トルク(=必要な力)はほぼ一定で
という条件だと、
概念的には「入力電力も約1/2になる」というイメージです。
インバータで省エネになる“条件”をはっきりさせておく
ここがすごく重要です。
インバータにすれば、何でもかんでも省エネになるわけではない です。
省エネ効果が大きいのは、こんな設備です。
- 元々、ダンパ・バルブ・スロットルで“ムダに絞っていた”ファン・ポンプ
- 機械側の減速比やクラッチで速度を落としていたコンベア・回転機
- 常にフル回転させる必要はないのに、とりあえず直入れで回していた設備
つまり、「本当はいらない出力」を垂れ流していたところにインバータを入れると、省エネ効果が出やすいということです。
一方で、
- そもそもいつもフルパワーで使っている
- 回転数を落とせないプロセス
- 回生や負荷変動がほとんどない
といった設備では、インバータ化しても省エネ効果は限定的になります。
省エネ以外のメリット
省エネだけでなく、インバータ化には他にもメリットがあります。
- ソフトスタート・ソフトストップ
→ 機械に優しく、衝撃トルクを抑えられる - 速度変更が簡単
→ ラインタクト変更・段取り替えに柔軟に対応できる - 電流波形が整えやすい(※条件による)
→ 直入れ起動時の突入電流を抑制できる
省エネ目的でスタートしても、
結果的に「機械寿命が延びる」「ライン調整がしやすくなる」といった副次効果も得られるケースが多いです。
まとめ:インバータは“回し過ぎているモータ”に効く省エネツール
最後にポイントを整理します。
- 国内の産業用インバータは、三菱・安川・OMRON・富士・東芝・日立など、国内大手だけでも選択肢が豊富
- 高機能型/汎用型の違いを押さえておくと、「とりあえず一番高いの」で選ばず、用途に合わせた選定がしやすくなる
- 直入れ→インバータ化で省エネになるのは、
「本当はそこまで回さなくていいモータを、ムダに全力で回していた」
ような設備
- 回転数を落とす × 電圧を落とすことで、
入力電力もおおよそ比例して下がる(=省エネに効く)- 一方で、常にフル出力が必要な設備では、インバータ化しても省エネ効果は限定的
インバータは「なんとなく省エネになりそうだから入れる」ものではなく、
「回し過ぎているモータに、本当に必要な分だけ仕事をしてもらうためのツール」
と考えると、
どこに入れるべきか/どこには不要か、判断しやすくなります。


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