- この記事の対象になる方
- はじめに:フィジカルAIは「魔法」じゃない。でも「武器」にはなる
- フィジカルAIの定義(この記事での扱い)
- まずは「導入しやすい工程」から考える
- なぜピッキング工程が対象になりやすいのか
- 仕分け済み箱か、未仕分け箱かで難易度が激変する
- 搬送が入りやすい理由:対象物が「分かりやすい」と勝てる
- 逆に難しい工程:細かい部品の取り付けが一気に難しくなる理由
- 判断フレーム:「見える・迷わない・動かせる」で点数を付ける
- PoCは「試験」じゃない。「運用の予行演習」です
- 「今までのものを変えて導入できるか?」を必ず考える
- AIに満点を求めない(ここ、超重要)
- 最後に:導入可否を一発で判断する「現場チェックリスト」
- まとめ:フィジカルAI導入の判断は「見える・迷わない・動かせる」
この記事の対象になる方
この記事は、すべてのFA業界に従事する技術者の方、そして「自動化したいけど人を減らすにはどうすればいいのか分からない」経営者の方向けに、筆者の独断と偏見も混ぜつつ「フィジカルAI」について書きます。
正直に言います。
自動化・電子化って、やってるとできる気がしてくるんですよね。しかも一度うまくいくと、さらに気が大きくなる。で、気づいたら現場が「詰み」そうな案件に突入していた…というのは、FAあるあるだと思います(私はあります)。
だからこそ今回は「夢を語りつつ、地に足をつける」記事にします。明るくいきましょう😊
はじめに:フィジカルAIは「魔法」じゃない。でも「武器」にはなる
フィジカルAIは、うまく当たると「現場の景色が変わる」類の技術です。
一方で、当たらないと「高い置物」が爆誕します。しかも置物はだいたい、現場の通路を狭くします(これもあるある)。おまけに使われていないのに減価償却だけしているなんていう、、、「どっかで見たような・・・」って言うあなた!!気が合いますね。
なので最初に結論を言うと、フィジカルAI導入の可否は「技術の流行」ではなく、次の3つで判断すると失敗しにくいです。
- 「見える」:AIが対象物を安定して認識できるか
- 「迷わない」:判断ロジックが揺れない環境を作れるか
- 「動かせる」:ハード(ロボット・搬送・ハンド)が再現性よく実行できるか
この3つが揃う工程から入れる。これが「勝ち筋」です。
フィジカルAIの定義(この記事での扱い)
ここでいうフィジカルAIは、次の状態を指します。
AIが2Dまたは3D空間を認識し、独自判断して指令を出し、物理層(ロボット・搬送・機械)が動作すること
つまり超ざっくり言うと、
ソフトが自動判断し、ハードが実行する
これです。
もう少し砕くと、フィジカルAIはだいたい次の流れで動きます。
- センサー(カメラ、3D、など)で「見て」
- AIが「これが対象だ」と決めて
- どう動くか「計画して」
- ロボットや搬送が「動く」
この一連が安定して回る工程が「導入しやすい工程」です。
まずは「導入しやすい工程」から考える
判断を下すうえで、最初に考えるべきは「どの工程なら入りやすいか」です。
おすすめは、いきなり最難関に突っ込まないこと。最初の一歩は、成功しやすいところからが良いです。
導入を考えやすい工程(例)
- 人で仕分けされた箱からピッキングしている
- 人が搬送している(台車、箱、パレットなど)
逆に難しいと判断しやすい工程(例)
- 細かい部品を取り付けている(微細組付け、姿勢合わせ、嵌合、締結など)
ここからは「なぜそうなるのか」を、現場の言葉で説明します。
なぜピッキング工程が対象になりやすいのか
「人間が判断しやすいものは、AIも判断しやすい」
これがかなり本質です。
AIも「目」が必要です。その目の多くは、カメラ(2D)や3Dセンサーが代用します。細かく言えば、RGBカメラなのか、深度カメラなのか、レーザーなのか…いろいろありますが、この記事では深追いしません。
ここで想像してみてください。
あなたが箱の中を見て、「あれ?これ何だ?」ってなる瞬間、ありませんか?
- 光が反射して見えない
- 色が背景と同化している
- 袋がくしゃっとなって形が分からない
- 部品が重なって輪郭が消えている
この「人間でも迷う瞬間」は、AIもだいたい迷います。
だから導入を成功させたいなら、次の発想が重要です。
「AIを賢くする」より先に「AIが迷わない現場を作る」
これができる工程は、導入が一気に簡単になります。
仕分け済み箱か、未仕分け箱かで難易度が激変する
ピッキングといっても、難易度は2種類あります。
- A:すでに仕分けされた複数の箱から取る(部品が箱ごとに分かれている)
- B:仕分けされていない箱(混載)から対象部品を見つけて取る
当然、Bのほうが難しいです。人でも難しいですよね。
つまりフィジカルAI導入を判断するときは、工程だけでなく、前工程(仕分け・整流)まで含めて考える必要があります。
ここで言いたいことはこれです。
「仕分けされた箱を用意できるか」も、導入検討に入れてください
現場によっては「仕分けが手間だからAIにやらせたい!」となりがちですが、そこをいきなりAIに任せると、たいてい難易度が跳ねます。
最初は「人が仕分け → AIが取る」から入り、うまく回ったら「仕分けの自動化」へ進む。これが堅いです。
搬送が入りやすい理由:対象物が「分かりやすい」と勝てる
搬送も同じです。搬送される対象物が「見分けのつきやすい箱・台車・パレット」なら、導入しやすいです。
逆に難しくなるのはこんなケースです。
- 台車が現場ごとにバラバラ(車輪の癖も違う)
- 荷姿が毎回違う(はみ出し、傾き、ラップの反射)
- 通路に「いつも何か置いてある」(障害物の常連がいる)
搬送系は、AIの性能以上に「現場の運用ルール」が成功を左右します。
フィジカルAIの判断は、技術だけじゃなく「現場の整頓・標準化」まで込みで評価すると精度が上がります。
逆に難しい工程:細かい部品の取り付けが一気に難しくなる理由
微細組付けが難しい理由は、単に「部品が小さいから」ではありません。難しさの正体はこれです。
- 認識:小さい・反射する・向きがシビア・重なりやすい
- 判断:許容公差が厳しい(ちょいズレが不良)
- 動作:力加減や姿勢合わせが必要(接触すると即アウト)
- 品質:不良流出が許されない(100点を求められがち)
要するに「見える・迷わない・動かせる」の全部が高難度になります。
なので、いきなりここを狙うより、まずは工程の中で「一番単純で、戻しが効く部分」から入るのが現実的です。
たとえば同じ「組付け」でも、
- 部品の供給整流だけ
- 箱出しだけ
- 梱包だけ
- 目視検査の補助だけ
など、部分最適で勝ちやすい場所があることも多いです。
判断フレーム:「見える・迷わない・動かせる」で点数を付ける
ここからが本題です。
フィジカルAIを実装できるかどうかは、次の3つに分解して、ざっくり点数(○△×)を付けると判断が速くなります。
1)「見える」:AIが対象を安定して認識できるか
チェック例
- 対象物の輪郭がはっきりしているか(反射しない/背景と同化しない)
- 照明条件が安定しているか(影が強すぎない/逆光がない)
- 置かれ方が“ある程度”揃っているか(完全ランダムは厳しい)
ここが×なら、まず現場側の工夫(照明、背景、整流、治具)で○に寄せられるかを考えます。
2)「迷わない」:判断が揺れない条件を作れるか
チェック例
- 判定ルールが明確か(OK/NGの境界が言語化できる)
- 例外処理が定義できるか(分からないときに止まる/人に渡す)
- 工程のばらつきが“許容範囲”に収まっているか
フィジカルAI導入でよくある事故は「AIに100点を求める」ことです。
現場の落としどころとしては、
「分からないときに、分からないと言える設計」
これがめちゃくちゃ強いです。全部をAIに決めさせない。逃げ道を作る。これが安定のコツです。
3)「動かせる」:ハードが再現性よく実行できるか
チェック例
- ハンドで掴める形状か(吸着できる/把持できる)
- 設置・固定のばらつきが少ないか(位置が毎回ズレない)
- 安全柵・協働・速度など、運用制約の中で回せるか
AIが100点でも、ハードが70点だと、工程全体は70点になります。
つまり「ソフトだけ」では勝てません。フィジカルAIは「ハンドと治具が主役」になることが多いです。
PoCは「試験」じゃない。「運用の予行演習」です
「まずはPoCをしてみる」
これは大賛成です。ですがPoCで大事なのは、実験を「実戦に寄せる」ことです。
PoCで試したいこと(明るく言うと「地獄ポイントの先回り」)
- 仕分けの箱にいろんなものを入れても取ってこれるか?
- どんな台車でも判定して運べるか?
- 光が変わったらどうなる?(朝夕、蛍光灯、影)
- 部品が重なったら?袋が反射したら?ラベルが剥がれたら?
- 分からないときに止まれるか?人に渡せるか?
最初から完璧を目指さず、まずは「スモールスタート」で“現実の揺れ”を吸いましょう。
PDCAを回して、工程側を整える(仕分け、整流、照明、標準化)と、AIの正解率がグッと上がることは多いです。
「今までのものを変えて導入できるか?」を必ず考える
よくある話です。
「現状を一切変えずにフィジカルAIを入れたい」
理想としては分かります。現場は忙しいし、止めたくない。
でも、フィジカルAIは「現場がAIに寄る」ことで成功確率が跳ねます。
たとえば、
- 箱を統一する
- 置き方を揃える
- ラベル位置を決める
- 反射する袋をやめる(またはマット化)
- 通路に物を置かない運用にする
こういう“地味な改善”が、実は一番効きます。
そしてここで、筆者の偏見を言います。
「日本企業は「変える」が苦手な場合が多い」
過剰品質が誰かを幸せにするケースもありますが、全員を疲れさせるケースもあります。
もしあなたが経営者なら、「本当にかかっている工数」を把握するのが大事です。
その過剰品質を維持するために、大量の工数やメンテナンス費をかけている可能性があります。
「変えないコスト」は、目に見えにくい。
だからこそ、導入検討では「工程を変える選択肢」も同時にテーブルに乗せてください。
AIに満点を求めない(ここ、超重要)
次に大事なことは、「AIに満点を求めない」ことです。
AIは統計と学習の世界なので、基本的に100%ではありません。
だから目指すべき基準は、これです。
「今やっている人より精度が高い」または「人の工数を確実に減らす」
もし「100%じゃないとダメ」なら、最初からAIを主役にしない方が良い場合もあります。
その場合は、
- ルールベースの判定システム
- あらかじめ決められた動作をする専用機(治具でガチガチに固める自動機)
こういう方向が向いています。
フィジカルAIは万能ではなく、「適材適所」で光ります。
最後に:導入可否を一発で判断する「現場チェックリスト」
最後に、現場で使える簡易チェックを置いておきます。これで社内説明もしやすくなります。
フィジカルAI導入が「進めやすい」サイン
- 「対象物が見分けやすい」箱・台車・パレットで運用できる
- 「仕分け・整流・照明」など、工程側を少し変える余地がある
- 「分からない時は止める/人に渡す」運用が許される
- 「スモールスタート」できる範囲がある(PoC場所・期間・協力体制)
「難しいかも」のサイン(でも改善で勝てる可能性あり)
- 荷姿・置き方・型式がバラバラで、現場標準がない
- 微細組付けで「位置・姿勢・力加減」がシビア
- 不良流出ゼロ前提で、例外処理が許されない
- 現場が忙しすぎて「工程を変える余地がゼロ」
難しいサインが出ても、落ち込まなくて大丈夫です。
フィジカルAIは「工程設計」とセットで勝てる技術です。つまり、“改善の余地がある現場”ほど伸びしろがあります😊
まとめ:フィジカルAI導入の判断は「見える・迷わない・動かせる」
- フィジカルAIは「ソフトが判断し、ハードが実行する」仕組み
- 判断は「見える」「迷わない」「動かせる」の3点で分解すると迷わない
- ピッキングや搬送は入りやすい。微細組付けは一気に難しくなる
- PoCは「運用の予行演習」。現場の揺れを吸ってPDCAで勝ち筋を作る
- 「AIに満点を求めない」。必要ならルールベースや専用機も選択肢に入れる
本記事は学習目的の情報提供です。実際の電気工事・設計・配線・機器選定・部材選定・改造は、法令・社内基準に従い、有資格者および責任者の管理下で実施してください。現場条件により最適解は変わるため、必ずメーカー仕様書・設計基準・安全規程・JISを確認のうえ判断してください。



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