この記事の対象
古くなってきたインバータ(INV)を更新したい。そんなすべての保全・生技・機器メーカー・施工会社など、FA業界に従事する方に向けて書きます。
この記事で分かること
- 「更新すべきINV」を迷わず決める優先順位の付け方(10年・熱・埃の見極め)
- 別メーカーへ置き換えるときにハマりがちな「容量・端子・回生抵抗・通信」の注意点
- 更新後に揉めないための「現地現物の確認」「設置環境の守り方」「チェックリスト」
はじめに:まず最初に言います
冗談抜きで、少なくとも「200台以上」の生産設備インバータを「別メーカーへ」担当として置き替えした実績がある筆者だから語れる、ここは確実に抑えて更新してくれポイントをまとめます。
同メーカーの後継機へ更新はよくありますが、「まとめて別メーカー」は、なかなか経験できないと思います。別メーカーにした理由は、コスト・納期・今後のシェアなど、
いろいろ大人の事情がありました…(あるよね、そういうの😇)。
そして、最初に大事なことを「強め」に言います。
「10年以上経ったインバータは置き換えた方が吉」
「ファンは購入して定期交換してください!!」
なぜそこまで言うのか。
当時、業務分析した結果、インバータ交換や異常でのトラブルが慢性的に多いことが分かったからです。
保全員の業務効率化で発覚したパターンですね。
さらに断言します。
「インバータを設置することを舐めないでください」
「10年後、痛い目を見るのは生産・工場担当者・工事担当者・導入メーカーの皆さんです」
では、早速いきましょう!!😊
交換対象の決め方(優先順位で迷わない)
更新は「全部いっぺんに」は難しいことが多いです。だからこそ、優先順位の付け方が超重要です。筆者のおすすめは、次の4段階。
優先度1位のインバータくん
- 「10年以上選手」
- 「盤クーラなし」かつ「雰囲気温度40度以上」で設置
- 「冷却ファン」または「盤内」が「埃まみれ」
優先度2位のインバータくん
- 「10年以上選手」
- 「盤クーラなし」かつ「雰囲気温度40度以上」で設置
優先度3位のインバータくん
- 「10年以上選手」
- 「冷却ファン」または「盤内」が「埃まみれ」
優先度4位のインバータくん
- 「10年以上選手」
ここから「なぜその順なのか」を、現場の言葉で説明します。
なぜその更新優先度なのか
1)「10年選手」が危ない理由
一般にコンデンサの平均寿命は「5〜10年」ほどと言われます。もちろんインバータにもコンデンサは入っています。電源が必要な機器ですし、直流から交流へ変換する整流回路でもコンデンサが効いてきます。
筆者の感覚ですが、故障したインバータは「10年以上」が「9割以上」を占めている印象です。
もちろん使い方・環境次第で前後します。でも「10年」はひとつの分岐点です。
「10年を超えたら『いつ壊れても不思議じゃない』に切り替える」
「壊れてからでは遅い。止まるのはラインです」
2)「盤クーラなし×雰囲気温度40度以上」が重症な理由
これは結構重症です。とはいえ、致し方ない部分もあります。昔ほど設置環境についてとやかく言われなかった工場もありますよね。
でも設置環境として「雰囲気40度以上」は、盤内はもっと高いです。さらに言うと、インバータ内部はそこから「+20度」くらい上がっているケースもあります。
筆者はサーモで計測したことがありますが、真っ赤だった記憶が離れません。
熱は、寿命を確実に削ります。ゆっくり確実に削ります。こわい。
「熱は静かに確実に寿命を削る」
「目に見えないから放置されやすい。だから先に潰す」
3)「埃まみれ」が重症な理由(地味だけど効く)
これも重症です。盤のフィルターを交換しない、またはルーバーだけでフィルターが付いてない盤、たくさん見てきました。
想定できなかったら付けようと思わない。担当として埃と熱対策に苦労したことがない人には、なかなかピンと来ないんですよね…。
じゃあ見つけた後に清掃すればOKか?というと、まあOKなんですけど、その間も放熱できずに劣化が進んでいるわけで…。
だから結論はこれです。
「10年経ってるなら、交換+清掃で一度リセットしよう」
200台更新したときは、盤内清掃もセットでやりました。地味だけど、これが後で効きます。
インバータのメーカー置き換え時に注意すること
ここからが本番です。
別メーカーへ置き換えるとき、現場がハマりやすいポイントは大きく3つです。
- 選定の時点での注意点
- パラメータ設定での注意点
- 取付位置・設置環境を守れるか
順番にいきます。
1.選定の時点での注意点
・インバータ容量の置き換え(同じkWにすればOK?)
ここ、めちゃくちゃ多い落とし穴です。
「3.5kWを3.5kWに置き換えればOKでしょ?」
と思った人。気持ちは分かります。でも「大間違い」になり得ます。
メーカーが変わると「許容電流」が違うことがあります。
つまり、同じkWでもモータの定格電流を満たせない場合がある、ということです。
「同じkWでも『定格電流が足りない』が起こる」
「モータ定格電流を満たせないなら『1ランク上』を選ぶ」
ここは必ず、モータ銘板の定格電流と、インバータの定格出力電流(ND/HD含む)を照合してください。
「台数が多い更新」ほど、ここでミスると地獄です(経験者)。
・入出力端子について(図面だけ確認はダメ)
入出力端子は、何が使われているか「確実にすべて」確認してください。
ここで重要なのは、
「確認=図面で確認」ではダメ、ということです。
「図面確認だけはNG」
「現地現物で『図面と同じか』を確認する」
筆者も、まとめて図面で確認して大変になった経験があります。
「じゃあメーカーに調査お願いすればいいじゃん」と思うかもしれませんが、調査費…ばかにならないです。
だからこそ、自信がない図面・設備は担当者が事前確認しておくと、計画がスムーズにいきます。
具体的に見るべきは、こんな項目です。
- 低速・中速などの多段速端子が使われているか
- アラーム出力(異常出力)端子は使われているか
- リセット端子は使われているか
- オプションで増設したI/Oが使われているか
- 置き換え後も「同じ機能」が再現できるか
筆者はここを見落として痛い目を見ました。オプション品を急遽手配して対応したこともあります。
そして厄介なのが「置き換え後に機能が消えると安全上NGになる」ケースです。
たとえば、非常停止を押したとき。
ブレーキ付きモータがない場合、押したらフリーラン…と思いきや、現場によってはこんなことをしている場合があります。
- 非常停止信号、または低速を「0Hz」に設定
- 「0Hz到達」を検知
- 検知したら自動的にLAN信号を落としてマグネット(MC)を落とす
つまり「止まり方」を作り込んでいるんです。
もし更新でその機能ができなくなると、製造メーカーの安全点検的な観点でOKとは言いません。
「更新後は機能がないのでできませんでした」
これは基本「NG」です
・通信について(プロトコルより大事なこと)
通信についても、もちろん確認が必要です。
置き換え後、PLC側と通信できる手段があることを確認してください。
Ethernet/IP、CC-Link、DeviceNet、Modbus RTU、RS-485など、だいたいどこかに対応手段があります。速度がそこまで求められないなら、通信自体は大問題になりにくいことも多いです。
でも、より大事なのはこっちです。
「通信より大事なのは『使っているI/O機能が置換後もあるか』」
通信は通る。でもI/Oで組んだインターロックが再現できない。
これが一番しんどいパターンです。
・回生抵抗について(ここ大事なポイント)
ここ、更新で一番ハマる可能性がある場所です。
「抵抗なんて一緒でしょ?」って思うじゃないですか。違うんですよね、メーカーによって。
さらに言うと、処理の上限も違うので、担当であれば「生産の状態」をメーカー・施工会社へ説明しておくこと。メーカー・施工会社側は担当者へ「どういう運転で回生が出るか」を聞いてください。
つまるところ、台形制御であれば「減速時のみ回生」を気にするイメージになりがちです。
でも知っていてほしいのは、現場には「常時回生が発生する工程」もあるということです。
そして厄介なのが、過去の誰かがそのことに気づかず、分からずに「とりあえず大きい抵抗器」を付けていたケース。
この場合、生産時に起きている現象はこうです。
- 常時回生している
- 抵抗は常に発熱している
- でも、たまたま処理し切れていただけ
つまり、ギリギリの綱渡りで“成立していただけ”の可能性があります。
しかも、常時回生用の抵抗器や回生コンバータが本来必要なのに、そうではない型式が付いている場合もあります。
「回生抵抗は『メーカーが変わると別物』」
「工程が常時回生なら、抵抗ではなく回生コンバータを検討する」
もし分からなければ、最初から「電源回生コンバータ」の導入を視野に入れてください。ここでケチると、後から熱・寿命・異常で跳ね返ってきます。
2.パラメータ設定での注意点
基本的な加減速設定、電子サーマル、V/F制御、ベクトル制御などは設定できるとして、気にしてほしいのは「モータの登録」です。
インバータと同メーカーか、それ以外かで設定の流れが変わることがあります。
特にPMモータを登録する際、d軸・q軸インダクタンスをモータメーカーに確認しないといけない場合があります。
ここを適当にすると、トルクが出ない、発熱、異音、ハンチングなど、地味に嫌な症状が出ることがあります。
「PMモータは『モータ定数』が命」
「分からないは放置せず、メーカーに確認して潰す」
また、置換後は「停止方法(減速停止・惰性停止)」「外部非常停止時の動作」「再起動条件」もセットで確認してください。更新後に止まり方が変わると、現場が混乱します。
3.取付位置はINVメーカーの設置環境を守れるか
最後のポイントです。地味ですが一番「揉める」ポイントです。
インバータメーカーの設置環境、守れてますか?
「排熱・放熱計算したから大丈夫」ではなく、ルールを守れているか否かがすべてです。
故障時に確認されるのは前提として「メーカーが提示する環境を作れているか」だけです。
これは前提です。
たとえば、使用環境を守っていたのに故障したらクレームしますよね。
使用環境を守らずに故障しても「そりゃそうだ」と思いますよね。そういうことです。切り分けができません。
「設置環境を守っていないと、故障原因の切り分けができない」
「しっかりしている会社ほど『なぜ壊れたか』を追及する」
もしやむを得ず守れない場合は、はっきりと説明してください。
「メーカーの設置環境ではないですが、現場制約でこうしています」と。
万が一故障して交換する際に「なぜ守れていなかったのか」が論点になります。経験があるから言えます。
更新を成功させる小ワザ(200台更新で効いたやつ)
最後に、実務的に効いた小ワザを置いておきます。台数が多いほど効きます。
- 現地調査は「写真+端子台の接写+配線番号」まで残す(後で神になる)
- 置換後の試運転は「単体運転→低速→定速→減速→非常停止」の順で確認
- 同一設備をまとめてやる場合「標準パラメータ」と「例外リスト」を分けて管理
- 盤内清掃とフィルタ交換を「更新とセット」にする(寿命の底上げになる)
最後に:チェックリスト(この順で潰すと揉めにくい)
事前(計画・調査)
- 「10年超」「高温」「埃」該当台数の洗い出し
- モータ銘板(定格電流)とINV定格電流の照合
- 現地現物でI/O端子の使用状況を確認(図面だけNG)
- 回生の有無(減速だけか、常時回生か)を工程から確認
- 設置環境(温度・換気・クリアランス・フィルタ)を確認
交換当日(施工・復旧)
- 端子の取り違い防止(写真・タグ・結線確認)
- 試運転内容は速度別に確認:低速→高速等
- 置換後も安全動作・インターロックが再現できているか確認(実際に非常停止押してみる)
交換後(安定化)
- 盤内清掃・フィルタ交換・ファン交換計画の作成を提案
- 予備品(ファン、操作パネル、通信OPなど)の整備
- 故障ログ・交換履歴の台帳化(次の10年を楽にする)
まとめ
- 「10年以上」は更新の判断基準として強い。止まる前に先回りする
- 別メーカー置換は「同じkW=同じ性能」ではない。定格電流で見る
- 図面だけ確認は危険。「現地現物」でI/Oの使用状況を押さえる
- 「回生抵抗」は別物。工程が常時回生なら回生コンバータも検討
- 設置環境を守れないなら、最初から説明しておく。後で論点になる
更新は「交換作業」ではなく「将来トラブルを潰す投資」です。
「熱」「埃」「回生」「I/O」この4点を押さえるだけで、10年後のあなた(と現場)がかなり救われます😊
本記事は学習目的の情報提供です。実際の電気工事・設計・配線・機器選定・部材選定・改造は、法令・社内基準に従い、有資格者および責任者の管理下で実施してください。現場条件により最適解は変わるため、必ずメーカー仕様書・設計基準・安全規程・JISを確認のうえ判断してください。


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