電圧降下とは?計算式とケーブルサイズ選定の考え方を実例で解説

電気・制御
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この記事でわかること
  • 電圧降下を考慮することがなぜ必要か
  • 電圧降下の計算式の意味
  • スケアサイズを比較したとき、どのサイズが実務的に妥当か

この記事の対象になる方

  • 工場設備の幹線や動力配線を選定する生技・保全・設備導入担当者及び全ての技術者
  • ケーブルサイズを許容電流だけで決めてよいか不安なエンジニア
  • 電圧降下の計算式は知っているが、実務でどう判断すればよいか迷う方

はじめに

許容電流だけ見てケーブルを選ぶと、一見うまくいっているようで、最後に現場で泣かされることがあります。
その代表例が電圧降下です。

電源側では十分な電圧が出ていても、配線が長くなればなるほど、そして電流が大きくなればなるほど、負荷端では電圧が下がります。これが電圧降下というものです。

日本電線工業会の技資第103号Bは、まさにこの電圧降下計算に必要なインピーダンスを整理した資料です

電圧は流せば良いのではなく、「末端で欲しい電圧を確保できるか否か」が重要です!!

今回学ぶことの概要をパワポで把握しよう

解説はするのでサラっとパワポを確認してください。

電圧降下とは

電圧降下とは、配線の途中で電圧が失われ、受電端の電圧が送電端より低くなることです。
特に工場の動力配線では、配線長が長い・電流が大きい・力率が低いという条件が重なると、想像以上に効いてきます。

単純に言えば、盤から220Vを送っても、機械の端子では220Vそのまま届くとは限りません。
この差を見積もるのが電圧降下計算です。

大前提として知っておきたいこと

交流はベクトルで考える

直流なら抵抗だけ見ればかなり整理しやすいですが、交流はそう単純ではありません。
交流では、抵抗(R)成分だけでなく誘導リアクタンス(X)成分も含むため、ベクトルで見るのが基本です。
力率が分かっている場合の電圧降下式はこちら。

ΔV = K・I・ℓ(R cosθ + X sinθ)
 K:三相3線であれば√3、単相2線であれば2
 R:kmあたりの抵抗Ω ※JEMAまたはケーブルメーカーから引用する
 X:kmあたりのリアクタンスΩ ※JEMAまたはケーブルメーカーから引用する

誘導リアクタンスの電圧は抵抗電圧と90°ずれる

抵抗による電圧降下は電流と同相です。

一方、誘導リアクタンスによる電圧降下は、電流に対して90°進む成分として扱います。
なので交流回路では、抵抗分とリアクタンス分を同じ向きに足すのではなく、位相を考えて合成する必要があります。
式に R cosθ + X sinθ が出てくるのはそのためです。
のちに図で解説します!

電圧降下のベクトル図はこれだ

はい。これを見てどゆこと?ってなった方はこちら↓

え、まだ分かんないって???

うーーーーん

右図は力率cosθ=1(0°)のときのお話で、IXが含まれなくなるというわけです。(sinθ=0なので)

つまり左の図は力率分を含めた(傾けた図)ということになります!

電圧降下の計算式

今回使う基本式はこれです。

ΔV = √3 × I × ℓ ×(R cosθ + X sinθ)

各記号の意味は次の通りです。

  • ΔV:電圧降下[V]
  • I:負荷電流[A]
  • ℓ:配線長[km]
  • R:交流導体抵抗[Ω/km]
  • X:リアクタンス[Ω/km]
  • cosθ:負荷力率

許容される電圧降下の考え方としては、内線規程ベースで分岐回路2%、幹線3%、こう長に応じた合計5~7%といった整理が示されています。

今回は5%を一つの基準として見ていきましょう!!

計算例はこうだ!!

前提条件

今回の前提は下記とします。

  • 配線長 ℓ:200m
  • 送電圧:AC220V
  • 許容電圧降下:5%
  • 許容電圧降下の目安:11V以下(220Vの5%の意)
  • 線種:CV-4C
  • R、X:日本電線工業会 技資第103号B 参考
  • 負荷電流:60A
  • 負荷力率 cosθ:0.8
  • sinθ:0.6

なお、RとXはメーカー資料で開示があればそちらを優先し、無い場合は日本電線工業会の技資第103号Bのような技術資料を参考にするのが実務的です。

22sqの場合

22sqの条件は次の通りです。

R = 1.08、X = 0.0893

※引用:日本電線工業会の技資第103号B参考

計算すると、

ΔV = √3 × 60 × 0.2 ×(1.08×0.8 + 0.0893×0.6)
ΔV ≒ 19.1V

電圧降下率は約 8.67%、末端電圧は約 200.9V です。
220V送電で200Vは何とか確保できていますが、5%基準の11V以下には入りません。
つまり、22sqは今回条件では厳しいという判断になります。

38sqの場合

38sqの条件は次の通りです。

R = 0.626、X = 0.084

※引用:日本電線工業会の技資第103号B参考

計算すると、

ΔV = √3 × 60 × 0.2 ×(0.626×0.8 + 0.084×0.6)
ΔV ≒ 11.5V

電圧降下率は約 5.21%、末端電圧は約 208.5V です。
5%基準にはほんのわずかに届きませんが、末端200Vを十分確保したいという実務感覚では、かなり有力な候補になります。

60sqの場合

厳密に5%以下を狙うなら、次に見るべきは60sqです。

R = 0.397、X = 0.0841

※引用:日本電線工業会の技資第103号B参考

計算すると、

ΔV = √3 × 60 × 0.2 ×(0.397×0.8 + 0.0841×0.6)
ΔV ≒ 7.65V

電圧降下率は約 3.48%、末端電圧は約 212.4V です。
この条件なら、5%以下を十分クリアできます。

では結論、どのサイズを選ぶべきか

今回の条件で整理すると、筆者的な見解では結論こうなります。

  • 22sq
    末端200Vもぎりぎり。これよりは大きくしたいところ
  • 38sq
    末端200V確保を目安にするなら十分現実的
  • 60sq
    5%以下を厳密に守るならこちらが無難

つまり、
電圧降下5%または受電200Vを十分確保することを実務目安にするなら38sq
厳密に5%以下とするなら60sq、という結論になります。
これは22sq・38sq・60sqの計算結果から導いた判断です。

実務で見落としやすいポイント

RとXは何でも同じではない ※必ずケーブルの線種ごとに確認する

RとXは、ケーブルサイズだけでなく、周波数、心数、布設形態、ケーブル構造でも変わります。
日本電線工業会の技資第103号Bでも、単心3条、2心および3心、4心、一括シース形などで値が分かれています。
つまり、別の欄の数値をそのまま流用すると、静かに計算を間違えます。

力率は負荷の力率を使う

電圧降下計算で使う cosθ は、その回路を流れる電流に対応した負荷側の力率です。
ケーブル固有の力率ではありません。幹線なら幹線全体の合成力率、単独負荷ならその負荷の力率を使うのが基本です。
式が R cosθ + X sinθ になっている以上、力率の設定を雑にすると計算全体がぼやけます。

許容電流だけでは決まらない

60Aを流すだけなら、感覚的にはもっと細いケーブルでもいけそうに見えます。
それでもサイズが大きくなるのは、今回の支配条件が電流容量ではなく電圧降下だからです。
距離が長いほど、この傾向は強くなります。

じゃあざっくりの目安はどうなの?? ※みんな知りたいのここだよね?

筆者のざっくり見積りパターンでいくと
計算式から ℓ = 0.1 , 0.2 , 0.3 kmで考えると距離に比例することが分かります。
そのため、定格負荷に対し

  • 0.2kmの時:安全率2.0
  • 0.1kmの時:安全率1.5

で考えると近い値になりやすいです。 ※現場の環境から判断しましょう

まとめ

電圧降下は、単なる計算問題ではありません。
盤から負荷まで、本当に必要な電圧が届くかを確認するための設計そのものです。

ケーブルサイズを選ぶときは、まず許容電流で候補を出し、そのあとに電圧降下で絞り込む流れが最も失敗しにくいと感じています。
特に長距離幹線では、許容電流だけで選ぶと、あとから電圧降下で再選定になることが本当にあります。
※当たり前です

電線はただの銅の塊ではありません。
交流ではRもXも持ち、しかも力率まで絡んできます。

だからこそ、電圧降下をちゃんと見て選んだケーブルは、

現場での信頼も厚いので答えられるようにしましょう。


本記事は学習目的の情報提供です。実際の電気工事・設計・配線・機器選定・部材選定・改造は、法令・社内基準に従い、有資格者および責任者の管理下で実施してください。現場条件により最適解は変わるため、必ずメーカー仕様書・設計基準・安全規程・JISを確認のうえ判断してください。

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