この記事の対象になる方
- EtherNet/IP、EtherCAT、PROFINETの違いがよく分からない方
- 産業用Ethernetの通信規格を整理したい方
- 生産技術・保全担当・製造メーカー従事者でFAネットワークを知りたい方
はじめに
産業用ネットワークを選定するときに混乱しやすいのが、「通信方式」「ケーブル種類」「コネクタ形状」がごちゃ混ぜで語られてしまうことです。
例えば、EtherNet/IP、EtherCAT、PROFINETはいずれもEthernet系の産業用通信です。
ここで疑問に思いますよね??Ethernet「系」って、、、つまり同じ??
いいえ、違います。
同じケーブルやコネクタを使っていても、通信方式が違えば、そのまま通信できるわけではありません。

この記事では、EtherNet/IP、EtherCAT、PROFINETの違いと、UTP/STPケーブル、RJ45、M12 D-codeコネクタの選定について、確認すべきポイントを整理していきます。
3つの通信は相互接続できるのか
まずは結論からですが、EtherNet/IP、EtherCAT、PROFINETはそれぞれ別の通信方式であり、そのまま相互通信はできません。
| PLC側 | 相手機器 | 通信可否 |
|---|---|---|
| EtherNet/IP | EtherNet/IP機器 | 通信可能 |
| EtherNet/IP | EtherCAT機器 | そのままでは不可 |
| EtherNet/IP | PROFINET機器 | そのままでは不可 |
| EtherCAT | EtherCAT機器 | 通信可能 |
| PROFINET | PROFINET機器 | 通信可能 |
次に、各通信の用途や特徴をざっくり一覧表で把握していきましょう。
各通信の用途
| 項目 | EtherNet/IP | EtherCAT | PROFINET |
|---|---|---|---|
| 主な用途 | PLC、I/O、画像処理、ロボット、インバータ | サーボ、モーション制御、高速I/O | 欧州設備、Siemens系、海外設備 |
| 通信イメージ | ScannerとAdapterで通信 | マスタから各スレーブを通過しながら通信 | ControllerとDeviceで通信 |
| 得意なこと | 対応機器が多く、汎用性が高い | 高速性、同期性が高い | 欧州設備や海外装置で採用が多い |
| 相互通信 | EtherNet/IP同士なら可能 | EtherCAT同士なら可能 | PROFINET同士なら可能 |
| 注意点 | Scanner/Adapterの役割確認が必要 | 通常のEthernet HUBは使用不可 | PLCや機器がPROFINET対応か確認が必要 |
汎用性を持たせるならEthernet IPが一番です。
高速性を求めるならEtherCAT、海外での汎用性であればPROFINETという住みわけでいいでしょう。
「通信方式」と「物理部品」は分けて考えよう
産業用Ethernetを考えるときは、主に3つの項目に分類して考えると分かりやすくなります。
実際の業務ではこれらの言葉が縦横無尽に飛び交うため、
「一体、何のお話されてますか。。。。あわわ」となりますが、この表を把握していれば問題ないでしょう。
| 分類 | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| 通信方式 | EtherNet/IP、EtherCAT、PROFINET | 機器同士が会話するルール |
| ケーブル | UTP、STP、Cat5eなど | 信号を伝える線 |
| コネクタ | RJ45、M12 D-coded | 接続する口の形 |
重要なのは、RJ45で接続できるからといって、すべての通信ができるわけではないということです。
RJ45やM12 D-codeは、通信方式ではなく、ケーブルを接続するためのコネクタ形状の事です。
一方で、EtherNet/IP、EtherCAT、PROFINETと呼ばれる部分は、通信の中身になります。
通信を身近な言語で捉えよう
中身を専門的な用語でいうならば「プロトコル」です。
これは私たちの身近なもので例えるなら、「話す言葉」のようなものです。
例えば、それぞれ「英語、ドイツ語、中国語」のようにイメージしてください。
この「話す言葉」にあたるものが、技術用語では「通信プロトコル(または通信規格)」と呼ばれています。
つまり、コネクタ形状が同じでも、通信規格が違うと通信(会話)が成立しません。

ここからは、それぞれの通信方式について、簡単に紹介していきたいと思います。
EtherNet/IPとは
EtherNet/IPは、ODVAが管理する産業用Ethernet通信です。
(ODVA:国内外の主要ベンダによって運営されている非営利団体のことです)
標準Ethernet、TCP/IP、UDP/IPという通信規格を利用しながら、CIPという制御用の通信ルールを使います。
(ここは今回の記事では深く考えず、「そうなんだ~」と認識いただければ結構です)
PLC、リモートI/O、ロボット、画像処理装置、インバータなど、幅広いFA機器で使われており、
例えば、OMRON、KEYENCE、三菱電機のような皆さんがよく使用する機器で見かけることが多いかと思います。
またEtherNet/IPでは、PLC側をScanner(親)、相手機器側をAdapter(子)と呼ぶことがあります。
機器選定時は、「EtherNet/IP対応」と書かれているだけでなく、ScannerなのかAdapterなのかも確認する必要があるということを覚えておきましょう!
例えば、PLCがEtherNet/IP Scannerとして動作し、リモートI/OがEtherNet/IP Adapterとして動作することで通信が成立します。
基本的に、Ethernet/IPを使用できる機器が製造メーカー側でも喜ばれます。
なぜなら対応機器が多いからです!
EtherCATとは
EtherCATは、高速性や同期性を重視した産業用Ethernet通信です。
サーボ、モーション制御、高速I/O、半導体装置などでよく使われます。
EtherCATは、配線イメージだけを見るとRS-485通信のようにマスタ(親)からスレーブ(子)を順番につないでいく構成に見えます。
つまり、HUBで分岐はしない(できない)数珠つなぎのイメージということです!
ただし、RS-485は電気的な通信規格であり、EtherCATはEthernetをベースにした産業用通信プロトコルです。
EtherCATでは、フレームが各スレーブを通過しながら必要なデータを読み書きするため、高速性や同期性に優れています。

筆者は昔、「RS-485とEtherCATって何が違うの?渡り配線で通信する感じが似てるよね?」となりましたので、主な違いを次に記載しておきます。
RS-485通信とEtherCATの違い
RS-485通信
RS-485通信は、親➡子へそれぞれ通信するイメージになります。
例えば
親局「1番さん、データください」
1番子局「はい、これです」
親局「次、2番さん、データください」
2番子局「はい、これです」
という感じです!

学校で例えるなら
先生が出席番号順に生徒へ質問する
というイメージが近いと思います。
EtherCAT
EtherCATは、親➡子➡子というように連続して渡すイメージです。
親局「まとめてデータ流すので、読み書きして返却してね」
1番子局「はい、これです」
2番子局「はい、これです」
こんな感じです!

学校で例えると
回覧板がクラスを一周して、各生徒が自分の欄だけ書き込む
つまりEtherCATは、各機器にいちいち順番に問い合わせるというより、
流れているデータ列に各スレーブ(子)がその場で読み書きする というイメージになります。
PROFINETとは
PROFINETは、プロフィバス協会により発表された産業用Ethernet通信です。
欧州製設備、搬送装置、プロセス設備、海外メーカー装置などで見かける機会が多いと思います。
PROFINETは標準Ethernetをベースにした通信で、通常のI/O通信だけでなく、リアルタイム性を考慮した通信にも対応しています。
PROFINETでは、標準Ethernetスイッチ(HUB)を使うことも可能です。
特に海外メーカーの装置を導入する場合、PLCやI/OがPROFINET前提になっていることもあるため、通信規格は事前確認するようにしましょう!
ケーブル:UTPとSTPの違い
ケーブル選定では、UTPとSTPの違いも重要です。
| 種類 | 内容 | 向いている場所 |
|---|---|---|
| UTP | シールドなしツイストペアケーブル | 事務所、制御盤内の短距離、ノイズが少ない場所 |
| STP | シールド付きツイストペアケーブル | 工場、インバータ周辺、モータ配線付近、長距離配線 |
UTPはシールドがないため、事務所やノイズの少ない環境で使われることが多いです。
例えば、オフィスや事務所のほとんどはUTPです。というか筆者はUTPしか見たことがありません…。
一方で、STPはシールド付きのため、ノイズの影響を受けにくい構造になっています。
FA現場では、インバータ、サーボアンプ、モータ配線、電磁弁、動力線など、ノイズ源が多く存在します。
そのため、工場設備で使用する場合は、STPまたはシールド付きの産業用Ethernetケーブルを選ぶことが多いです。
ケーブル選定は次のステップで考える
通信方式が決まったら、次にケーブルやコネクタを考えます。
ただし、ケーブル選定は通信方式とは別の話です。
例えば、同じEtherNet/IPでも、
制御盤内で使う
盤外のセンサ周辺で使う
可動部で使う
インバータやサーボの近くで使う
油や粉塵がある場所で使う
といった条件によって、選ぶケーブルやコネクタは変わります。
※ケーブルやコネクタについては、別の記事で詳しく紹介しています↓
まとめ
EtherNet/IP、EtherCAT、PROFINETは、すべてEthernet系の産業用通信ですが、それぞれ別の通信方式です。
RJ45やM12 D-codedはコネクタ形状であり、UTPやSTPはケーブルの種類です。
そのため、同じRJ45で接続できても、通信方式が違えばそのまま通信できないということを頭の片隅に置いておきましょう。
また通信方式は「話す言葉」、ケーブルは「通り道」、コネクタは「接続口」というイメージを持っておくことが重要です。
工場や工程、設備にあった通信方式を選定するようにしましょう!
本記事は学習目的の情報提供です。実際の電気工事・設計・配線・機器選定・部材選定・改造は、法令・社内基準に従い、有資格者および責任者の管理下で実施してください。現場条件により最適解は変わるため、必ずメーカー仕様書・設計基準・安全規程・JISを確認のうえ判断してください。




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