この記事の対象になる方
- インバータの意味、概要を知りたい方
- モーター制御の基本を知りたい方
- 生産技術、保全、電気制御の仕事をしている方
はじめに
「インバータってよく聞くけど、結局インバータって何がどうなる機器なの???」
みなさん、そんな疑問を抱えながら仕事をしていませんか?
インバータとは、簡単に言うとモーターの回転数を変えるための機器です。
工場の設備では、コンベア、ファン、ポンプ、巻き取り装置など、さまざまな場所でモーターが使われています。
ただ、モーターを電源にそのまま接続すると、基本的に一定の速度で回転します。
でも、現場では回転数を変えたい場面がありますよね?
そこで使われるのがインバータです。
インバータを使うことで、モーターの回転速度を速くしたり、遅くしたり、なめらかに加速・減速させたりできます。
現場では、
「このコンベア、もう少し遅くできない?」
「ファンの風量を落として省エネできない?」
「ポンプの流量を調整したい」
「モーター起動時のショックを小さくしたい」
このような場面でインバータがよく使われます。
この記事では、実務でざっと300台以上のインバータを更新してきた筆者が、インバータとは何をする機器なのか、なぜモーターの回転数を変えられるのか、工場で使うときのメリットと注意点について解説していきます!
インバータとは何ですか?
インバータとは、電気の周波数を変えることで、モーターの回転数を制御する機器です。
三相交流でのモーター制御を前提とすると、
周波数(Hz)は、1秒間に変化する交流の波の数を表します。
この交流の波の数によって、モーターを早くしたり遅くしたりすることができます。
※なぜモーターの回転と交流の波が関係するのか分からない方は、次の記事も参考にしてください↓
また、「周波数を変えるとモーターの回転数が変わるのはなんで?」という方のために、公式を載せておきます↓
周波数と回転数の関係(公式)

この公式から分かることは、
周波数が低ければ低回転、高ければ高回転になるということです。
では実際に、周波数がいくつのときに回転数はおおよそどの程度になるか、公式から算出した早見表で見ていきましょう。
周波数と回転数の早見表 ※極数は4を前提に算出
| インバータ出力周波数 | モーターの回転数 |
|---|---|
| 10 Hz | 300 rpm |
| 30 Hz | 900 rpm |
| 50 Hz | 1500 rpm |
| 60 Hz | 1800 rpm |
実際のモーターではメーカーごとに記載があるので、最終的にはそちらを参考にしましょう。
また、本来はすべりが発生するため、上記の回転数から-50rpmした数値が近しい値になることが多いです。
「じゃあ直繋ぎした場合の回転数はいくつになるんですか??」というのも気になりますよね🤔
※直繋ぎ(じかつなぎ):回転数を変更する減速機や機器を接続しない状態で、モーターを電気的に接続すること
直繋ぎした場合の回転数はいくつ?
日本の電源周波数は、東日本では50Hz、西日本では60Hzというのが決まっています。
| エリア | インバータ出力周波数 | モーターの回転数 |
|---|---|---|
| 東日本 | 50 Hz | 1500 rpm |
| 西日本 | 60 Hz | 1800 rpm |
周波数が固定された理由はその昔、
東日本はドイツ製の50Hzの電気を生む発電機、
西日本はアメリカ製の60Hzの電気を生む発電機が普及してしまったことから、
送る周波数が別々になってしまったと言われています。
そしてこの周波数を変更し、モータの回転数を変化させることができる機器。
それががインバータです。
一般家電のインバータと工場用インバータの違い
インバータと聞くと、エアコンや冷蔵庫、洗濯機などの家電をイメージする方も多いと思います。
家電でも「インバータ搭載」という言葉をよく見かけます。
家電用のインバータも、基本的な考え方は同じです。
モーターの回転数を細かく制御することで、無駄な電力を減らしたり、静かに運転したりします。
つまり、省エネにつながる機器と認識いただければOKです。
一方で、工場用のインバータは、産業設備のモーターを制御するために使われます。
例えば、以下のような設備です。
- コンベア
- ファン
- ポンプ
- 撹拌機
- 巻き取り装置
- 送り装置
- 搬送装置
工場用インバータの場合、単に省エネするだけでなく、設備の動作速度を調整したり、PLCと連携し、異常時に保護停止させたりする役割もあります。
そのため、家電用よりも設定項目が多く、外部端子、通信、保護機能、トルク制御など、さまざまなパラメータを確認する必要があります。
インバータはどこに接続されている?
一般的にインバータは、モーターへ送る動力線に接続されています。

上の図のとおり、インバータがモーターをコントロールしていることが分かりますね!

インバータは「モーターの周波数を変更する機器」なので、電気的にモーターの直上に設置されています。
インバータの仕組み
ここまで読んでいただいたみなさんは、次のことが理解できたかと思います。
次に、インバータが「なぜ周波数が変更できるのか」を理解していきましょう!
インバータは、交流電源をそのまま別の周波数に変えているように見えますが、内部では少し違う動きをしています。

基本的な流れは次のようになります。
①交流を一度直流に変える
②直流をもう一度、好きな周波数の交流に変える
つまり、インバータの中では、
交流 → 直流 → 交流
という変換が行われています。

次に、その手順について紹介していきます。
インバータの中にコンバータ部とインバータ部がある
見出しを見て、少し混乱する方もいるかもしれません。
よくFA業界で使用される「インバータ」ですが、これはFA機器の名称です。
実際には、
インバータ:直流→交流へ変更する機器の名称が一般的
ということを頭の片隅に置いておいてください。
先ほど説明したとおり、インバータは「交流→直流→交流」の変換を行っています。
そのため、中身は下図のようになっています。

これが、「インバータの中にコンバータ部とインバータ部がある」という話の正体になります。
このコンバータ部とインバータ部が、「交流→直流→交流」の変換を担っているわけです。

変換の流れを順番に確認していきましょう!!
交流を一度直流に変える
まず、機器のインバータに入ってくる電源は交流です。
工場でよくあるのは、三相200Vや三相400Vなどです。
インバータは、この交流電源を一度、直流に変換します。
この部分をコンバータ部と呼びます。

コンバータでは、ダイオードや整流回路を使って、交流を直流に変換します。
波のようにプラス・マイナスが入れ替わる交流を、直流の電気に整えるようなイメージです。
※交流から直流を作る仕組みについては、こちらの記事でも解説しています↓
直流をもう一度、任意の周波数の交流に変える
次に、直流に変換した電気を、もう一度交流に戻します。

ただし、ここで元の50Hzや60Hzに戻すだけではありません。
インバータは、必要な周波数の交流を作ります。
例えば、
- 10Hz
- 30Hz
- 45Hz
- 50Hz
- 60Hz
など、設定した周波数の交流を出力します。
この部分がインバータです。
インバータでは、半導体素子を高速でON/OFFさせることで、モーターに必要な交流を作ります。
この「半導体素子を高速でON/OFF」させて任意の周波数を生み出す制御は、「PWM制御」と呼ばれています。
PWM制御のイメージ図 ※もう少し理解したい人向け
PWM制御では、主に以下のことが行われています。
- パルスのON/OFF幅を変える
高速で電圧をON/OFFさせることで、電圧を増減させているイメージです。 - 直流は充電・放電を繰り返す
下図で水色の区間が充電、白色区間が放電をイメージしてください。
図では分かりやすいように大げさに描いていますが、ギザギザしながら幅に沿って変化しているということです。 - 高速で②を行うことで交流のような波形を作る
結果として、黒色のような交流波形を生み出しています。

このイメージのとおり、高速でスイッチングさせていることから、高周波が発生します。
「インバータはノイズが多い」と言われる理由は、ここにあるわけです。
インバータ制御とは?
インバータ制御とは、インバータを使ってモーターの回転数やトルクを制御することです。
単に周波数を変えるだけでなく、用途によっていくつかの制御方式があります。
代表的なものとして、次のような制御があります。
- V/F制御
- ベクトル制御
- PID制御
それぞれ簡単に紹介していきます。
V/F制御
V/F制御とは、電圧と周波数の比率を一定にしてモーターを制御する方式です。
Vは電圧、Fは周波数です。
例えば、周波数を下げるときに電圧も一緒に下げます。
これにより、モーターを安定して回しやすくなります。
V/F制御は、ファン、ポンプ、コンベアなど、比較的シンプルな速度制御でよく使われます。
メリットは、設定が比較的簡単で扱いやすいことです。
一方で、低速域で大きなトルクが必要な用途では、思ったより力が出ないことがあります。
【V/F制御のメリット・デメリットを簡単に】
メリット:設定が簡単
デメリット:低速域でトルクが出にくい
ベクトル制御
ベクトル制御は、V/F制御よりも高性能な制御方式です。
モーターの電流成分を細かく制御することで、トルクを出しやすくします。
簡単に言うと、低速でもトルクを出しやすい制御です。
例えば、搬送装置や巻き取り装置など、速度だけでなくトルクも重要になる設備では、ベクトル制御が有効になる場合があります。
ただし、ベクトル制御を使う場合は、モーター定数の設定やオートチューニングが必要になることがあります。
現場では、
「V/F制御では低速時に力が足りない」
「始動時にトルクが足りない」
「負荷変動が大きい」
という場合に、ベクトル制御を検討することがあります。
【ベクトル制御のメリット・デメリットを簡単に】
メリット:低速域でも高トルク
デメリット:V/F制御に比べて設定が多い
PID制御
インバータは、PID制御と組み合わせて使われることもあります。
例えば、ファンやポンプです。
ファンの場合、圧力センサーや風量の値を見ながら、インバータの周波数を調整します。
ポンプの場合、圧力センサーや流量計の値を見ながら、モーターの回転数を調整します。
例えば、配管圧力を一定にしたい場合、
- 圧力が低い → モーターを速く回す
- 圧力が高い → モーターを遅く回す
という制御をします。
このように、目標値に現在値をスムーズに近づける制御がPID制御です。
これにより、必要以上にモーターを回さずに済むため、省エネにもつながります。
ファンやポンプは、インバータによる省エネ効果が出やすい代表例です。
PID制御は、インバータが送る周波数をリアルタイムに変更する制御となります。
PID制御:インバータが送る周波数を外部からコントロールする制御方式のこと
V/F制御、ベクトル制御:インバータのモーターに対する制御方式のこと
インバータを使うメリット
インバータを使うメリットは多くあります。
工場設備では、単にモーターを回すだけでなく、速度調整、省エネ、設備保護、品質安定などにもつながります。
主なメリットは次のとおりです。
回転数を変えられる
一番大きなメリットは、モーターの回転数を変えられることです。
例えば、コンベアの速度を変えたい場合、モーターを一定速度で回すだけでは調整が難しくなります。
インバータを使えば、周波数を変えるだけで速度調整ができます。
生産条件に合わせて、
- 低速で流したい
- 高速で流したい
- 段取り時だけゆっくり動かしたい
- 製品によって速度を切り替えたい
といった使い方ができます。
設備の立ち上げ時にも、インバータで速度調整できると非常に便利です。
省エネにつながる
ファンやポンプでは、インバータによって大きな省エネ効果が出ることがあります。
例えば、ダンパーやバルブで流量を絞っている場合、モーター自体は高い回転数で動いたままです。
これは、車でアクセルを踏みながらブレーキで速度を調整しているような状態に近いです。
インバータでモーターの回転数自体を下げれば、無駄な電力を減らせます。
特に、常時運転しているファンやポンプでは、電気代の削減につながりやすいです。
※省エネについては、こちらの記事で計算していますのでどうぞ!!↓
始動電流を抑えやすい
モーターを電源に直入れで起動すると、大きな始動電流が流れます。
これにより、ブレーカ容量、電源容量、電圧降下、機械的ショックなどが問題になることがあります。
インバータを使うと、モーターをゆっくり加速させることができます。
これにより、起動時の電流や機械的ショックを抑えやすくなります。
例えば、コンベアをいきなり起動すると、ワークが倒れたり、機械に衝撃がかかったりすることがあります。
インバータで加速時間を設定すれば、なめらかに起動できます。
設備の動きを調整しやすい
インバータを使うと、設備の動きを後から調整しやすくなります。
例えば、設備導入後に、
「もう少し搬送速度を落としたい」
「この工程だけ速度を変えたい」
「起動をもう少しゆっくりにしたい」
「停止時の減速時間を長くしたい」
という調整ができます。
機械式のプーリーやギヤ比を変更しなくても、パラメータ設定である程度調整できる点は大きなメリットです。
生産技術や保全の立場から見ても、現場で調整しやすいのはかなり助かりますよね。
インバータを使うときの注意点
インバータは便利な機器ですが、使うときには注意点もあります。
特に工場設備では、ノイズ、モーター適合、パラメータ設定、更新時の互換性などに注意が必要です。
注意点については、以下の記事で詳しくまとめています↓
また、ノイズが多い環境でインバータ向けにアナログ出力を使用する際は、注意が必要です。
詳しくは、こちらの記事で解説しています↓↓
まとめ
インバータとは、モーターの回転数を変えるために使われる機器です。
工場では、コンベア、ファン、ポンプ、巻き取り装置など、さまざまな設備で使われています。
インバータを使うメリットは、回転数を変えられること、省エネにつながること、始動電流を抑えやすいこと、設備の動きを調整しやすいことです。
インバータの基礎として、次のことを覚えるようにしましょう。
インバータは、周波数を変えてモーターの回転数を変える機器

ぜひみなさんもインバータを使用し、適切な制御、省エネに繋げていきましょう!!
本記事は学習目的の情報提供です。実際の電気工事・設計・配線・機器選定・部材選定・改造は、法令・社内基準に従い、有資格者および責任者の管理下で実施してください。現場条件により最適解は変わるため、必ずメーカー仕様書・設計基準・安全規程・JISを確認のうえ判断してください。







この記事へのコメント