この記事の対象になる方
- 交流回路の並列計算が苦手な方
- 生産技術、保全、設備設計で電気の基礎を学びたい方
- 抵抗とコイルの位相差を感覚的にも理解したい方
はじめに
どうもみなさん、こんにちは。末端エンジニアのにこらです。
前回、コイルの直列回路について解説しました。
今回はややこしくならないうちに並列回路を解説したいと思います。
交流回路の計算で、多くの人が一度は混乱するのが、抵抗とコイルが一緒に出てくる並列回路です。
直列回路では電圧をベクトルで考えましたが、並列回路では電流をベクトルで考えます。
ここが切り替わるポイントで、頭の中がこんがらがりやすいところです。
「何を言っているのかわからない…」とならないように、

今回は、抵抗とコイルの並列回路について、
なぜ電流をベクトルで考えるのか、どのように計算するのかを、できるだけ分かりやすく解説します。
前回直列はやりましたね。
ここに自分で図を入れます。

並列回路を理解するコツは、並列では電圧が共通で、変化するのは電流だと整理することです。
直列回路の解説はこちらをご覧ください↓
まず復習|コイルでは ELI と覚える
交流回路でコイルを考えるときは、ELI と覚えると分かりやすいと前回も解説しました。
E は電圧
L はコイル
I は電流
つまり、コイルでは
電圧 E が先、電流 I が後
という関係になります。

これは、コイルが電流の変化を嫌う部品だからです。
コイルに電流が流れると磁界が生まれます。
そして交流ではその磁界が変化するため、その変化を打ち消す向きの電圧が生じます。
その結果、コイルでは電流がすぐには変化できず、電圧が先、電流が後になります。
この関係が、並列回路の計算でも非常に重要です。
なぜ並列回路では電流をベクトルで考えるのか

ここが今回の主役です。
並列回路では、抵抗にもコイルにも、同じ電圧がかかります。
なぜなら、どちらも同じ電源に直接つながっているからです。
つまり、並列回路では共通なのは電圧です。
その一方で、各枝に流れる電流は同じではありません。
抵抗に流れる電流は、電圧と同相です。
コイルに流れる電流は、電圧より90°遅れます。
つまり、抵抗の電流とコイルの電流は、向きの異なるベクトルになります。
そのため、全体の電流は単純な足し算ではなく、ベクトル合成で求める必要があります。

並列で電流の三角形になるのは、電圧が共通で、電流に位相差があるからです。
直列回路との違い
ここで直列回路との違いを整理しておくと、一気に分かりやすくなります。
直列回路
- 共通なのは電流
- 各部品の電圧に位相差がある
- だから電圧をベクトルで合成する

並列回路
- 共通なのは電圧
- 各枝の電流に位相差がある
- だから電流をベクトルで合成する

直列は電圧の三角形、並列は電流の三角形。
ここを切り替えられると交流回路はかなり見やすくなります。
抵抗の枝電流とコイルの枝電流
並列回路では、まず各枝の電流を個別に求めます。
抵抗の枝電流は、オームの法則そのままです。
IR = V / R
一方、コイルの枝電流は、リアクタンスを使って求めます。
IL = V / XL
ここで注意したいのは、数値だけ見るとどちらも A ですが、位相が違うことです。
抵抗の電流 IR は電圧と同相
コイルの電流 IL は電圧より90°遅れ
このため、IR と IL は単純に足せません。
ここに自分で電流ベクトル図を入れます。
ベクトルで見るとこうなる
電圧を基準にすると、
- 抵抗電流 IR は横方向
- コイル電流 IL は下向き
- 全体電流 I はその合成ベクトル
という形になります。
つまり、全体電流 I は直角三角形の斜辺です。
式で表すと、
I = √(IR² + IL²)
となります。
これが、並列回路で電流ベクトルを使う理由です。
並列回路では、枝電流の向きが違うため、全電流は三平方の定理で求めます。
例題|抵抗とコイルの並列回路の電流を求める
では、例題をやってみましょう。
コイルと抵抗を並列にして、それぞれ
- コイルのリアクタンス XL = 12Ω
- 抵抗 R = 10Ω
- 電圧 V = 100V
の場合、全体の電流I(A)はいくつになるのでしょうか。

抵抗の枝電流を求める
まず、抵抗に流れる電流です。
IR = V / R
IR = 100 / 10
IR = 10A
コイルの枝電流を求める
次に、コイルに流れる電流です。
IL = V / XL
IL = 100 / 12
IL ≒ 8.33A
全体の電流を求める
抵抗電流とコイル電流は90°ずれているので、ベクトル合成します。
I = √(IR² + IL²)
I = √(10² + 8.33²)
I = √(100 + 69.4)
I = √169.4
I ≒ 13.0A
したがって答えは、
全体の電流は約13.0Aです。
なぜ 10A + 8.33A = 18.33A ではないのか

ここもかなり重要です。
直感的には、枝電流をそのまま足してしまいたくなります。
しかし、抵抗の電流とコイルの電流は、時間的な向きが違います。
抵抗電流は電圧と同じタイミング
コイル電流は電圧より90°遅れたタイミング
つまり、同じ向きの量ではないため、普通の足し算はできません。
ちょうど、横に10、縦に8.33の長さがあるとき、斜めの長さが18.33にはならないのと同じです。
直角三角形の斜辺として求める必要があります。

交流の並列回路では、電流の大きさだけでなく向きも持っている、と考えることが大切です。
並列回路でよく混乱するポイント
並列回路でよくある混乱は、直列回路の感覚をそのまま持ち込んでしまうことです。
たとえば、
- 直列では電流が共通だった
- だから並列でも電流をまとめてから考えたくなる
- 結果として、位相差を無視して足し算してしまう
という流れです。
ですが並列回路では、まず各枝の電流を個別に求めてから、最後にベクトル合成します。
順番としては次です。
- 電圧は各枝で同じ
- 各枝電流を求める
- 位相差を考えて全体電流を合成する
この流れを覚えるだけでも、かなり整理できると思います。
現場目線でどう理解すると覚えやすいか
業界で様々かと思いますが、実際の現場では負荷電流(A)として記載されているのでそちらを採用する。
理由は製品としてすでにコイルが組み込まれているパターン、またはモーターとして負荷電流が記載されているパターンがほとんどかと思います。
ただなぜそうなるのか、コイル抵抗は劣化していないかなど、知識として必要な場面もあるので理解していきましょう。
交流回路は図で見ると一気に分かりやすい
交流回路は、式だけ見ると難しく感じますが、図で見れば一気に理解しやすくなります。
並列回路では、
- 電圧は共通の基準
- 抵抗電流は基準と同じ向き
- コイル電流は90°遅れた向き
- 全電流はその合成
この図が頭に入ると、なぜ三平方の定理になるのかが直感的に見えてきます。
何度でもこの図をみて理解していきましょう。

まとめ
抵抗とコイルの並列回路では、各枝に同じ電圧がかかります。
そのため、まず各枝の電流を求め、最後にベクトル合成して全体電流を求めます。
並列回路で大切なのは、
- 並列では電圧が共通
- 変化するのは電流
- コイルの電流は電圧より90°遅れる
- だから電流をベクトルで考える
という流れです。
次の機会では、コンデンサの性質について理解していきましょう!
本記事は学習目的の情報提供です。実際の電気工事・設計・配線・機器選定・部材選定・改造は、法令・社内基準に従い、有資格者および責任者の管理下で実施してください。現場条件により最適解は変わるため、必ずメーカー仕様書・設計基準・安全規程・JISを確認のうえ判断してください。




この記事へのコメント