この記事の対象になる方
- 交流回路の計算でつまずきやすい方
- 生産技術、保全、設備設計で電気の基礎を学びたい方
- コイルと抵抗の直列回路を感覚的にも理解したい方
はじめに
どうもみなさんこんにちは。
TOPIX100で末端エンジニアしているにこらです。
今日は、なんとなくしか理解しないまま使っている人も多い、交流回路におけるコイルの計算について解説していきたいと思います。
交流の計算で、多くの人が一度はつまずくのが、抵抗とコイルが一緒に出てくる回路です。
直流のように単純に足し算できそうなのに、ベクトル、位相差、リアクタンスなどが登場して、一気に難しく感じてしまいます。

そこで今回は、コイルの性質をできるだけ分かりやすく整理しながら、抵抗とコイルを直列にしたときの計算までつなげて解説します。
コイルとは何か
コイルは、電流を流すとまわりに磁界をつくる部品です。
この磁界がポイントで、交流のように電流が増えたり減ったりすると、磁界も変化します。
そして磁界が変化すると、その変化を打ち消す向きに電圧(逆起電圧)が発生します。
これを自己誘導といいます。
つまりコイルは、次のような性質を持っています。
コイルは電流の変化を嫌う部品です。
簡単にまとめると
電流を増やそうとする
→ 磁界が強くなる
→ その変化を打ち消す向きの電圧が出る
→ つまり増えにくい
電流を減らそうとする
→ 磁界が弱くなる
→ 今度は減るのを妨げる向きの電圧が出る
→ つまり急にゼロになりにくい
この性質があるため、コイルでは電流がすぐには変化できません。
なぜコイルでは電圧が電流より90°進むのか
ここが、多くの人が一度止まるポイントです。
参考書では、コイルでは電圧が電流より90°進むとだけ書かれていて、なぜそうなるのかが省略されていることがよくあります。
そのため、ここで頭の中に引っかかりが残る人はかなり多いはずです。
ここから先を読んで「いや突然わかんねーよ!!!」ってなったあなた。
筆者としては、ここはいったん「ふーん、そうなんだ」くらいで大丈夫です。
とりあえず今は、
コイルにかかる電圧は、電流の変化の速さに比例する、と理解してくれればOK。
コイルの基本式は次です。
v = L × di/dt ※di/dtはiをtで微分という意味だが、時間的変化を表したいときに使う。
つまりコイルは、電流そのものではなく、電流がどれだけ急に変わろうとしているかに反応しています。
交流では電流が正弦波で変化します。
そして正弦波を微分すると、位相が90°進んだ波形になります。
その結果、コイルでは
- 電流があとからついてくる
- 電圧が先に現れる
という関係になり、
コイルは電流の変化=磁界の変化により電流が妨げられる。だから電圧が電流より90°進む
となります。
この関係は、ERIと覚えると分かりやすいです。
ELI(エリー)で覚えると混乱しにくい
交流回路では、E・L・I の関係を覚える語呂として、ELIという考え方があります。
E は電圧
L は抵抗
I は電流

抵抗では、電圧と電流は同じタイミングで変化します。
つまり位相差はありません。
一方でコイルでは、電圧が先、電流が後です。
これをベクトルで書くと、電流に対してコイルの電圧が90°進んだ位置にきます。
試しに例として抵抗Rとコイル抵抗XLを置いた直列回路がこちらになります。

抵抗Rは電圧と電流が同相、コイルXLは電圧が90°先行。
これだけでも交流回路の見え方がかなり変わります。
なぜ直列回路では電圧の三角形で考えるのか
抵抗とコイルを直列にしたとき、回路の中を流れる電流は同じですよね。
直列回路なので、一本道だからです。
しかし、各部品にかかる電圧は同じではありません。つまり、
抵抗の電圧とコイルの電圧は、向きが異なるベクトルとして考える必要があります。
そのため、直列回路では電圧を単純に足し算せず、直角三角形として合成します。
- 抵抗の電圧:VR = I × R
- コイルの電圧:VL = I × XL
この2つをベクトル合成したものが、電源電圧Vです。(下図参照)

直列回路で三角形になるのは、電流が共通で、電圧に位相差があるからです。
コイルのリアクタンスとは何か
コイルには抵抗そのものはなくても、交流に対して流れにくさを持ちます。
これを誘導リアクタンスといいます。
記号は XL です。
これは、コイルが交流の電流変化を妨げる度合いを表したもので、抵抗Rとは役割が少し異なります。
抵抗は電流を熱に変えて消費する成分です。
一方、リアクタンスはエネルギーを磁界として一時的にためたり戻したりする成分です。
そのため、交流回路では R と XL を別物として考えます。
抵抗とコイルの直列回路の計算方法

では、いよいよ計算です。
コイルと抵抗を直列にして、それぞれ
- コイルのリアクタンス XL = 12Ω
- 抵抗 R = 10Ω
- 電圧 V = 100V
の場合、電流はいくつになるのでしょうか。

このとき、まず求めるのは合成した交流の流れにくさです。
これをインピーダンスZといいます。
式は次です。
Z = √(R² + XL²)
数値を代入すると、
Z = √(10² + 12²)
Z = √(100 + 144)
Z = √244
Z ≒ 15.6Ω
となります。
次に、オームの法則の交流版として、
I = V / Z
を使います。
I = 100 / 15.6
I ≒ 6.41A
したがって答えは、
電流I=約6.4Aです。
なぜ抵抗とリアクタンスを足し算してはいけないのか
ここも大事なポイントです。
直流の感覚でいくと、10Ωと12Ωだから22Ωかな、と考えたくなります。
しかし交流では、抵抗とリアクタンスは向きの違う成分です。
抵抗Rは電流と同じ向きの成分
リアクタンスXLはそれに対して90°ずれた成分
なので、同じ一直線上に並んでいるわけではありません。
そのため、単純な足し算ではなく、直角三角形の斜辺として求める必要があります。
RとXLは、数値はどちらもΩでも、意味が違うため単純加算できません。

ベクトルで考えると交流回路が一気に見やすくなる
交流回路が難しく感じる原因のひとつは、数字だけで追いかけようとすることです。
しかし、ベクトルの図で考えると、
- 抵抗の電圧は横方向
- コイルの電圧は縦方向
- 全体の電圧は斜め方向
という見方ができるので、なぜ三平方の定理になるのかが直感的に見えてきます。
ここに自分でベクトルの直角三角形の図を入れます。

このイメージが持てるだけで、交流回路はただの暗記科目ではなくなります。
現場での理解として押さえたいこと
現場では、交流回路を毎回微分で考えるわけではありません。
実際の現場では定格負荷電流(A)の記載があるので、その電流値を目安にしています。
ただ、原理を理解できているかいないかはとても重要なことですので、一度しっかり理解しておくと、
式の丸暗記から抜け出せます。
特に押さえたいのは次の3点。
これが頭に入ると、インピーダンス、力率、電圧降下の考え方までつながっていきます。
交流回路は難しそうに見えて、実は電流と電圧の位置関係を整理すればかなり理解しやすくなります。
まとめ
コイルは、電流を流すことで磁界を生み、その磁界の変化によって電流の変化を妨げる部品です。
そのため、交流では電流がすぐには変化できず、コイルの電圧が電流より90°進む関係になります。
抵抗とコイルを直列にした回路では、電流は共通ですが、各部品の電圧には位相差があります。
だから電圧を直角三角形で考え、合成したインピーダンスを使って電流を求めます。
最後にリマインドとしてベクトル図を載せておきます。

本記事は学習目的の情報提供です。実際の電気工事・設計・配線・機器選定・部材選定・改造は、法令・社内基準に従い、有資格者および責任者の管理下で実施してください。現場条件により最適解は変わるため、必ずメーカー仕様書・設計基準・安全規程・JISを確認のうえ判断してください。



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