この記事の対象になる方
- FA現場でEthernetケーブルを選定する方
- LANケーブル、RJ45、M12 D-codeの違いが分からない方
- EtherNet/IP、EtherCAT、PROFINETなどの配線で迷っている方
はじめに
FA機器をEthernetで接続するとき、意外と悩むのがケーブル選定です。
- EtherNet/IP
- EtherCAT
- PROFINET
このような産業用Ethernet通信では、見た目は一般的なLANケーブルと似たケーブルを使うことがあります。
そのため、調べれば調べるほど
普通のLANケーブルでいいの?
UTPとSTPはどちらを選べばいいの?
RJ45とM12 D-codeは何が違うの?
Cat5eやCat6はどこまで気にするべき?
と迷うことがあります。

この記事では、産業用Ethernetケーブルの選び方を、FA現場目線でわかりやすく紹介していきます!
産業用Ethernetケーブルとは
産業用Ethernetケーブルとは、工場や装置などのFA現場で使われるEthernet通信用ケーブルのことです。
一般的なオフィス用LANケーブルと同じように、データ通信に使われます。
ただし、使用される環境は、次の表のとおり大きく違います。
| 使用場所 | 主な環境 |
|---|---|
| オフィス | ノイズが少ない、固定配線が多い、油や粉塵が少ない |
| FA現場 | ノイズが多い、振動がある、油や粉塵がある、可動部がある |
オフィスでは問題なく使えるケーブルでも、工場では通信エラーや断線、接触不良の原因になることがあります。
特にFA現場では、
- インバータ
- サーボアンプ
- モータ配線
- 電磁弁
- 溶接機
- 動力線
など、ノイズ源が多く存在します。
そのため、FA現場に使用する産業用Ethernetケーブルでは、シールド、耐油性、耐屈曲性、防水性、コネクタの固定力などの仕様を適切に選定する必要があります。
通信方式とケーブルは分けて考える
まず大前提として、おさらいになりますが、通信方式とケーブルは分けて考えましょう。
| 分類 | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| 通信方式 | EtherNet/IP、EtherCAT、PROFINET | 機器同士が通信するルール |
| ケーブル | UTP、STP、Cat5e、Cat6など | 信号を伝える線 |
| コネクタ | RJ45、M12 D-codeなど | 接続する口の形 |
EtherNet/IP、EtherCAT、PROFINETは通信方式です。
一方で、UTP、STP、Cat5e、Cat6はケーブルの種類です。
RJ45やM12 D-codeはコネクタの形状です。
つまり、
EtherNet/IPだから必ずこのケーブル
EtherCATだから必ずこのコネクタ
PROFINETだからRJ45は使えない
という単純な話ではありません。
実際には、機器側の仕様、設置環境、通信速度、配線距離、ノイズ環境を確認して選定します。
通信方式の違いについては、別記事で紹介しています↓
UTPケーブルとSTPケーブルの違い
Ethernetケーブルを選ぶときに、まず確認したいのがUTPとSTPの違いです。
| 種類 | 内容 | 向いている場所 |
|---|---|---|
| UTP | シールドなしツイストペアケーブル | 事務所、制御盤内の短距離、ノイズが少ない場所 |
| STP | シールド付きツイストペアケーブル | 工場、インバータ周辺、モータ配線付近、長距離配線 |
FA現場では、インバータ、サーボ、モータ、電磁弁などのノイズ源が多いため、STPまたはシールド付きの産業用Ethernetケーブルを選ぶことが多いです。
UTP / STPについては、こちらの記事でも紹介しています↓
FA現場ではSTPを優先した方が安全
FA現場で迷った場合は、基本的にはSTP系を優先した方が安全です。
理由は、ノイズ対策が弱いケーブルを選んで通信トラブルが起きると、あとから原因調査が面倒になるからです。
設備が立ち上がった後に、
こういったトラブルが出ると、原因調査にかなり時間がかかります。

筆者は、トラブルについて本質原因を常に求める組織にいたため、余計に大変だと思ってしまいます。
もちろん、STPにすれば絶対に通信トラブルがなくなるわけではありません。
- シールドの接地方法
- 配線ルート
- 動力線との距離
- 盤内のノイズ対策
- HUBや機器側の仕様
も関係します。
それでも、工場設備で使用する場合は、最初からノイズ環境を考慮したケーブルを選んでおいた方が、後々のトラブルを減らしやすいです。
もしUTPでトラブルがあった場合、「なぜなぜ分析」の行きつく先は、
直接原因:選定ミス
本質原因:基準書がない
といった方向に着地することが見えています。
そのため、初めから対策を打っておきましょう!
Cat5e・Cat6・Cat6Aはどう選ぶか
Ethernetケーブルでは、Cat5e、Cat6、Cat6Aなどのカテゴリも確認します。
| カテゴリ | 目安 | FA現場での考え方 |
|---|---|---|
| Cat5e | 1Gbps対応の目安 | 多くのFA用途で使いやすい |
| Cat6 | 1Gbps以上を意識した配線 | 余裕を見たい場合に選びやすい |
| Cat6A | 10Gbpsを意識した配線 | 高速カメラ、大容量通信などで検討 |
一般的なPLC、I/O、インバータ、センサ通信であれば、Cat5e以上で足りるケースがほとんどです。
ただし、高速カメラや画像処理装置、大容量データを扱う場合は、Cat6やCat6Aが推奨であるケースもあります。
ここで大切なのは、通信方式だけでカテゴリを決めないことです。
例えば、EtherNet/IPだからCat6Aが必要というわけではありません。
実際には、
- 機器の通信速度
- メーカー指定ケーブル
を確認して決めましょう!
RJ45とM12 D-codeの違い
次に、コネクタの違いです。
産業用Ethernetでよく出てくるのが、RJ45とM12 D-codeです。
| コネクタ | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| RJ45 | 一般的なLANコネクタ、制御盤内で使いやすい | PLC、HUB、PC、盤内機器 |
| M12 D-code | 丸型、防水・耐振動向き、産業用で使いやすい | 盤外I/O、センサ、フィールド機器 |

RJ45は、一般的なLANケーブルでよく使われるコネクタです。
オフィスや家庭でも見ることが多い、四角いLANコネクタです。
制御盤内のPLC、HUB、画像処理コントローラ、PC接続などでは、RJ45が使われることがあります。
一方で、M12 D-codeは丸型の産業用コネクタです。
ねじ込みで固定できるため、振動に強く、盤外や装置上で使いやすいです。
防水性や耐振動性が必要な場所では、M12 D-codeを選ぶようにしましょう。
(もちろん、接続先機器が適合していることも確認してください。)
制御盤内はRJ45、盤外はM12 D-codeが目安
ざっくりした目安としては、
- 制御盤内はRJ45
- 盤外や装置上はM12 D-code
と考えると整理しやすいです。
もちろん、最終的には機器側のコネクタ形状に合わせます。
例えば、
PLC側はRJ45
盤外I/O側はM12 D-code
という場合は、片側RJ45、片側M12 D-codeのケーブルを使うことがあります。
逆に、盤内機器同士であれば、RJ45-RJ45のケーブルで構成することが多いでしょう。
重要なのは、コネクタ形状だけで通信方式を判断しないことです。
M12 D-codeだからPROFINET専用
RJ45だからEtherNet/IP専用
というわけではありません。
M12 D-codeやRJ45は、あくまで接続口(コネクタ)の形状です。
M12 D-codeとA-codeの違いにも注意
M12コネクタには、D-code以外にもA-codeなどがあります。
ここも混乱しやすいポイントです。
ざっくり言うと、Ethernet通信でよく使われるのはM12 D-codeです。
一方で、M12 A-codeはセンサ、アクチュエータ、DC24V電源、I/O信号などで使われることがあります。
同じM12でも、キー溝の形状が違うため、基本的には誤挿入しにくい構造になっています。
つまり、M12という言葉だけで判断せず、
- A-codeなのか
- D-codeなのか
- X-codeなのか
- ピン数はいくつか
- 機器側の仕様は何か
などを確認する必要があります。
M12コネクタについては、こちらの記事も参考ください↓
ケーブル選定時に確認するポイント
産業用Ethernetケーブルを選ぶときは、次の項目を確認すると選定しやすいです。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 設置場所 | 盤内、盤外、装置上、可動部 |
| ノイズ環境 | インバータ、サーボ、モータ配線の近くか |
| 耐環境性 | 耐油、防水、防塵、耐熱、耐屈曲 |
| 配線距離 | メーカー仕様の範囲内か |
| メーカー指定 | 推奨ケーブルや指定型式があるか |
特に重要なのは、メーカー仕様を確認することです。
FA機器では、メーカーが推奨ケーブルや指定ケーブルを用意していることが多々あります。
通信速度や規格上は問題なさそうに見えても、メーカー指定から外れると、トラブル時の切り分けが難しくなることがあります。

故障時に調べた結果、「メーカー推奨品を使用していない……」なんてこともあるので注意しましょう。
可動部では耐屈曲ケーブルを使う
ロボット、スライダ、可動ステージ、ケーブルベアなどで使う場合は、耐屈曲ケーブルを検討しましょう。
通常のEthernetケーブルを可動部に使うと、繰り返し曲げによって断線することがあります。
特にケーブルベア内では、
- 曲げ半径
- 屈曲回数
- ケーブル外径
- 他ケーブルとの干渉
- 固定方法
などを確認する必要があります。
通信ケーブルは、見た目では断線しかけていることが分かりにくい場合があります。
このような症状が出る場合は、可動部のケーブル劣化も疑う必要があります。
耐油・防水・耐振動も確認する
工場では、油、クーラント、粉塵、水、振動などの影響を受けることがあります。
そのため、盤外で使用するEthernetケーブルでは、
- 耐油性
- 防水性
- 耐振動性
- 耐熱性
- 耐薬品性
これらも確認しましょう。
特に工作機械周辺や搬送設備では、オフィス用LANケーブルの感覚で選ぶと、被覆劣化や接触不良につながる可能性があります。
盤外に出るケーブルは、産業用ケーブルとして販売されているものを選ぶ方が安心です。
動力線とはできるだけ離して配線する
Ethernetケーブルは、動力線やインバータ出力線とできるだけ離して配線します。
特に注意したいのは、
- モータケーブル
- インバータ出力線
- サーボモータケーブル
- 大電流配線
- 電磁弁が多い配線束
などです。
シールド付きケーブルを使っていても、配線ルートが悪いとノイズの影響を受けることがあります。
ケーブルラックやダクト内で配線する場合も、動力線と通信線を分ける、交差する場合はできるだけ直角にするなど、基本的なノイズ対策を意識します。
選定例 ※一覧表
最後に、ざっくりした選定例をまとめます。
| 使用場所 | コネクタ | ケーブル目安 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 制御盤内のPLC-HUB間 | RJ45 | UTP、Cat5e以上 | ノイズが少なければ一般的な構成で可 |
| 制御盤内のPLC-画像処理装置間 | RJ45 | UTP 機器仕様次第でCat6以上 | 大容量通信なら仕様確認しCatを上げる |
| 盤外リモートI/O接続 | M12 D-code | STP、Cat5e以上 | 防水・耐振動・ノイズを考慮 |
| インバータ周辺 | RJ45またはM12 D-code INV仕様に合わせる | STP、Cat5e以上 | ノイズを考慮 |
| 可動部 | 機器仕様に合わせる | 耐屈曲Ethernetケーブル | 可動部は対屈曲を採用 |
| 油のかかる場所 | M12 D-code系が候補 | 耐油Ethernetケーブル | 耐油材質を採用 |
このように、同じEthernetケーブルでも、使う場所に合わせて選定するようにしましょう!
まとめ
産業用Ethernetケーブルを選ぶときは、通信方式、ケーブル、コネクタを分けて考えることが大切です。
またFA現場では、オフィス用LANケーブルと違い、ノイズ、振動、油、粉塵、可動、防水などを考慮する必要があります。
今回の記事では、選定例も紹介しました。

ただし、最終的には必ず機器メーカーの仕様書、推奨ケーブル、社内基準を確認するようにしてください。
(特に会社員の皆さん。独断で決めないようにしましょう。)
通信トラブルは設備稼働後に原因調査が難しくなるため、初期選定の段階で、少し余裕を持ったケーブル選定をしておくことをおすすめします。
本記事は学習目的の情報提供です。実際の電気工事・設計・配線・機器選定・部材選定・改造は、法令・社内基準に従い、有資格者および責任者の管理下で実施してください。現場条件により最適解は変わるため、必ずメーカー仕様書・設計基準・安全規程・JISを確認のうえ判断してください。






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