この記事の対象になる方
- 画像検査装置やAI外観検査の導入を検討している方
- 外観検査の自動化を進めたい生産技術・品質保証担当者
- 導入後の保全、運用、トラブル対応まで考えておきたい方
はじめに
みなさん、こんにちは。
今回は、画像検査を導入する際に、製造現場で課題・問題になりやすい部分をみなさんに共有します。

また、スムーズに立ち上げを進めるために、これだけは決めておこう!という内容を紹介したいと思います。
画像検査を導入するとき、多くの場合は、検査するツールに意識がいきがちになります。
例えば
- カメラの画素数は十分か
- 照明はどの方式がよいか
- AI検査に対応しているか
- 判定閾値は調整できるか
もちろん、これらはそもそもの検出目標を検知するうえで重要です。
選定前に整理しておくべきことは、こちらの記事で紹介しています↓
しかし、実際の現場では、画像検査装置のツールうんぬんよりも先に、議題にあがるものがあります。
それが、運用ルールが決まっていない問題です。
画像検査は導入して終わりではなく、半永久的に運用を現場で回していくことが重要です。
検査自体はできる。
でも、NG画像を誰も確認していない。
そもそも画像の確認方法を知らない。
画像データが保存されているが、誰も管理していない。どこに保存されているかも知らない。
装置が止まったときに、人でバックアップできない。
このような状態になると、せっかく画像検査を導入しても、現場で使いにくい設備、むしろ使えない設備になってしまいます。
画像検査の導入は「運用設計が重要」
画像検査の導入では、先ほど述べたように、装置選定や検査精度に目が向きやすいです。
しかし、現場で長く使うことを考えると、導入前に運用設計をしておく必要があります。
運用設計とは、簡単にいうと次のような内容です。
- 画像データを誰が管理するか
- NG画像を誰が確認するか
- 画像はどれくらい保存するか
- 装置が壊れたらどうするか
- 復旧時に元の状態へ戻せるか
- NG判定時に現場がどう動くか
これらが曖昧なまま導入すると、設備は完成しているのに運用で止まります。
よくあるのが、生技と製造は仕様を理解しているけれど、保全や品証が求める仕様が織り込まれていないケースです。
その結果、後から「そんな装置は知らない」「その運用では困る」といった問題が起こることがあります。
画像検査の失敗は、検査精度だけでなく運用ルール不足で起こる。
特に「画像検査」という項目に限っては品質保証、生産技術、製造現場、保全が関わる設備です。
品質保証は、検査結果を見たい、保管したい。
生産技術は、省人化につなげつつ、安定稼働させたい。
製造は、NGや異常時に誰がどうすべきか知りたい。
保全は、壊れたときに復旧できるようにしたい。
それぞれの立場で見るポイントが違うため、導入前にルールを決めておくことが重要です。

今回は、画像検査を導入する際に、運用面でこれだけは決めておきたい項目を整理します。

1.検査結果で決めておきたい項目
まず、検査結果で決めておきたい項目は次のとおりです。
- 検査結果はどんなデータを保存するか
- 検査結果はワークの製品番号が必要か
- 検査NG時は即時停止させるか
- 保存先のサーバーやHDD等は決まっているか
- 保存データは自動削除にするか、手動で抜き出すか
それぞれ簡単に解説していきましょう!!
検査結果はどんなデータを保存するか
画像検査でやりがちなのが、「どんなデータを管理していきたいか決まっていない」という状態です。
よく検討項目に上がる内容を列挙しておきますので、社内で決めておきましょう。
- 画像データは全て必要か
(OKデータ、NGデータ両方を残すかどうか) - 日付や時間データは必要か
- 検出したキズや汚れのサイズ表記は必要か
- 画像上でキズや汚れの場所を特定できる画像まで必要か
- 検査結果は画像だけでなく、CSVデータも必要か
検査結果はワークの製品番号が必要か
次に、ワークの製品番号が必要かどうかという内容です。
少し細かい話に見えるかもしれませんが、検査をする際に重要になる場合があります。
画像検査は、装置をポン置きし、インターロックを取るだけで検査自体はできてしまう場合がほとんどです。
ただし、それだけだと後で見返した際に、
「この製品ってどの製品?」
という事態になりかねません。
例えば、NGが出た際に作業員が手書きでメモする仕組みを作ったとしても、
「人での記載があっているのか?」
という疑問も生まれるでしょう。
もし製品番号を取り込む場合は、有識者に以下を確認しましょう。
- 製品番号はワークに連動させて、別のシステムから送信できるか
- ワーク自体にある製品番号から読み取りは可能か
また、これらが不可の場合は、
NG検出 ➡ ライン停止 ➡ 人でメモ
という手作業をおすすめします。
システムですべて解決しようとすると、費用が大きくなる場合がほとんどです。
検査NG時は即時停止させるか
検査NGが出た場合、その場で停止されては困るという生産ラインもあると思います。
その場で停止させない場合は、下記の対応を検討しておきましょう。
- アラームだけ出して、後の工程でNG停止させる仕組みにする
- アラームだけ出して、後の工程で自動で抜き出される仕組みにする
その場で停止して抜き出さない場合、アラームだけはその場で発報させることをおすすめします。
後工程に到着する前に、ワークを抜き出す必要が出た場合、
「実は不良品が流れてますが、どれか分かりません…」なんてことになりかねないからです。
保存先のサーバーやHDD等は決まっているか
画像は保存したい。
では、「画像保存」と仕様書に書いておけばよいのかというと、実際はそう単純ではありません。
出来上がってから、次のようなことで悩むケースがあります。
「USBで抜き出して、USBを持ち歩く運用にするの?」
「現場に据え置きされたHDDからしか抜き出せない?それは不便では…?」
自分はサーバーから抜き出せるはず!なんて思ってたら大間違いです。
正直、受注者側も「いかに仕様を満たしているか」しか考えない場合がほとんどで、発注者側の思いが伝わっていないことは多々あります。
こんな認識違いが生まれないように、以下を十分検討しておきましょう。
- 画像の保存先は、社内の指定サーバーか現場のHDDか
- どのくらいのデータ容量が必要か
- データはどのように管理するか
- 抜き出す運用にするか、抜き出さない運用にするか
保存データは自動削除にするか、手動で抜き出すか
保存先を決めたら、次に重要なことは「何日間のデータを溜めておくか」という視点です。
ここは、文書によって会社ごとに決められている場合がほとんどだと思います。
例えば、ISOの管理文書などがそれにあたりますよね。
紙の記録からデータになったとしても、保存期間に乖離がないようにしておきましょう。
最低限、検討しておきたい項目は以下のとおりです。
- 画像データの保存期間は何年間にするか
- もし削除する期日が来た場合、だれがデータを削除するか
- データ削除の手順はあるか
2.カメラ・照明回りで決めておきたい項目
カメラや照明回りで決めておきたい項目は、次のとおりです。
主に、保全的な目線が重要です。
- 始業前に点検は必要か
- 撮影時にワークは停止させるか
- 故障時に同じ状態へ復旧可能か
- 重故障の場合は、人による目視検査に切り替えるか
それぞれ簡単に解説していきます。
始業前に点検は必要か
始業前に点検する項目は、あらかじめメーカーとも相談、または社内で検討しておきましょう。
「実はカメラが故障していたのに検査していました!」なんてことがないように、以下は決めておきましょう!!
- レンズの清掃は毎日する?それとも目視で確認して判断する?
- キズや汚れのテストワークを使用した始業点検は行う?
- 照明は設定照度が担保できているか始業点検する?
撮影時にワークは停止させるか
これは検査する手段の話になりますが、停止させる or 停止させないによって、エリアカメラかラインカメラかの選定も変わると思います。
筆者としては、検査開始から終了までが分かりやすいので
停止 ➡ 検査 ➡ 送り
という流れをおすすめします。
ただ、ワークの都合上、連続して検査する場合もあると思います。
そこは製品や工程に合わせて、ツールを選定するようにしましょう!!
故障時に同じ状態へ復旧可能か
画像検査で非常に重要なのが、再現性です。
ここでいう再現性とは、故障や機器交換が発生したあとに、「元の検査状態へ戻せるか」という意味です。
「元の状態」とは、どんな状態をいう?
例えば、カメラを交換したとします。
「同じ型式のカメラに交換したから大丈夫」
そう思いたくなりますが、実際にはそう簡単ではありません。
- カメラの取付位置が少しズレる
- レンズのピントが微妙に変わる
- 絞りの設定が変わる
- 検査エリアの位置がズレる
こうなると、交換前と同じ条件で検査できなくなります。
画像検査は、機器を交換したあとに元の状態へ戻せる構造にしておくことが重要です。
つまり、装置のどの部分が壊れてもいいように、復旧手順を作成しておきましょうということです。
復旧手順は資料として残す
画像検査の復旧手順は、必ず資料として残しておいてください。
おすすめは、PowerPointやExcelなどで、写真付きの復旧手順書を作ることです。
誰が見ても復旧できるレベルの言葉で記載しておくことが重要です。
内容としては、次のような項目を入れます。
- カメラの取付位置
- カメラのブラケットの取付方法
- レンズの型式
- レンズのピント位置
- 絞り設定
- 照明の取付位置
- 照明角度
- 照明の明るさ設定
- コントローラの設定値
- 画像処理ソフトの設定バックアップ場所
- 検査エリアの設定
- しきい値
- 交換後は点検で正常動作を確認可能か
特に、なるべく写真付きで残すことが重要です。
文章だけで「元に戻す」と書いても、読み手が100人いれば100通りの解釈があります。
どの向きなのか。
どの高さなのか。
どの角度なのか。
どの位置を基準にしているのか。
このあたりは、写真や図で残しておくべきです。
復旧手順書は、詳しい人がいなくても最低限戻せるレベルで作ることが重要です。
画像検査は、立ち上げた人しか分からない設備になりやすいです。
生産技術の担当者が異動した。
メーカー担当者が変わった。
保全担当者が詳細を知らない。
現場では設定変更できない。
この状態でトラブルが起きると、復旧に時間がかかります。
重故障の場合は、人による目視検査に切り替えるか
画像検査が壊れたとき、人でバックアップする場合もあります。
ただし、ここにも注意点があります。
「人で簡単にできるよ」と思っていると、画像検査になったから目視検査の技術を持つ検査員を外してしまった、なんてことにもなりかねません。
必ず、下記のとおりバックアップする方法は準備しておきましょう。
- 人が検査できる環境=工程があるか
- 検査基準書はあるか
- 検査員は教育されているか
- 検査に必要な治具や照明はあるか
- 画像検査と同じ基準で人が判定できるか
- 人で検査した場合の記録はどう残すか
画像検査を導入すると、目視検査の体制を縮小することになります。
それは当然ですよね。そもそも省人することが目的なんですから。
ただそうなると、故障時に急に人で見ようとしても、検査台がない、照明がない、人がいない、基準が分からない、ということが起こり得ます。
画像検査を自動化するほど、故障時の人によるバックアップは軽視されがちです。
「機械がないから検査できない」という機械律速の体制にならないために、人でのバックアップは事前に検討しておきましょう。
導入前に運用ルールを決めることで現場が迷わなくなる
画像検査の運用ルールを導入前に決めておくと、現場が迷いにくくなります。
装置がNGを出したらどうするか。
装置が壊れたらどうするか。
画像データは誰が見るのか。
設定変更は誰が承認するのか。
復旧後に何を確認するのか。
これらが決まっていると、トラブル時の判断が早くなります。
逆に、ルールがないと毎回その場で判断することになります。
その場判断が増えると、人によって対応が変わります。
対応が変わると、品質も設備稼働も安定しません。
画像検査を安定運用するには、装置の性能だけでなく、現場が迷わないルール作りが重要
画像検査は、品質を安定させるために導入する設備です。

安定させるどころか、混乱を招くなんてことがないように、運用ルールはしっかり制定しておきましょう。
まとめ
今回は、画像検査を導入する前に決めておくべき点について記載しました。
画像検査を導入する際は、カメラ、照明、画像処理、AIなどの技術面に注目しがちです。
しかし、現場で安定して使い続けるためには、導入前に運用ルールを決めておくことが重要です。
今回挙げた2つの大項目は、最低限決めておくようにしましょう。
- 検査結果で決めておきたい項目
- カメラ・照明回りで決めておきたい項目
ここまで決めておくことで、画像検査は現場で使える設備になります。
何度も言いますが、
画像検査の導入で本当に大切なのは、検査できることだけではなく、導入後に現場が迷わず運用できることです。
本記事は学習目的の情報提供です。実際の電気工事・設計・配線・機器選定・部材選定・改造は、法令・社内基準に従い、有資格者および責任者の管理下で実施してください。現場条件により最適解は変わるため、必ずメーカー仕様書・設計基準・安全規程・JISを確認のうえ判断してください。



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