この記事の対象になる方
- 生技、保全、設備設計、制御設計に関わるFA業界の方
- エアシリンダと電動シリンダの使い分けに悩んでいる方
はじめに

みなさんどうもこんにちは。
大手JTCで末端技術エンジニアをしている二コラと申します。
今日取り上げたい題材はタイトルの通り、「エアシリンダvs電動シリンダ」についてです。
なぜ「vs」かと言いますと、皆さんすでに「どちらを使うべきか」「どっちの方がコストメリットがあるか」を散々検討したんじゃないでしょうか。
そんな中、一つのニュースが2026年の初めに業界を駆け巡りましたね。
そうです。
みなさん大好きKEYENCEがライン型シリンダセンサ&スマートバルブ CS/SPシリーズを新商品としてリリースしました。
公式でも空気圧制御をもっとはやく、安定的にする製品として打ち出されており、同社の商品カテゴリに新たに空気圧制御機器が並びました。
このリリースを見て、衝撃だったとともに、ちょっと面白いと感じました。
なぜなら今の時代、何かあればすぐ電動化という話になりがちですよね。
皆さんが議論を重ねてきたように高精度、位置決め、データ活用、IoT、どれを取っても電動アクチュエータ(電動シリンダ)の話は強い。
にもかかわらず、
高性能、高品質なラインナップしかないあのKEYENCEがここで空圧に踏み込んできた。
これは単なる製品追加ではないことは明らかと感じました。
KEYENCEが出したのは「単なるシリンダ用センサ」ではない
まず大前提として、ここにきてKEYENCEが「単なるシリンダ用センサ、バルブ」を発表する訳がないです。
製品ページからみたポイントは、次の2点に重点を置きリリースしたと読み解きました。
1.見える化
保全でエアシリンダのセンサー未検知不良を対応した方なら分かると思います。
ラダーやリレーではソレノイド向けの出力がONしているのになぜかシリンダセンサからアンサーがかえって来ない・・・
だいたい考えられるのがシリンダの動作不良、エア漏れ、センサの位置ずれ、このあたりが多いイメージです。
そんな解決策としてほしかった対策が「見える化」です。
今回これを叶えることが可能な商品群になっていると感じます。
2.維持管理
維持管理という言葉でまとめましたが、その中には耐久性・保全性の向上という意味があります。
今回のラインナップではそのどちらも含んでいます。
特に高速流路と減速流路を切り替えることで衝撃を緩和するシステムは、シリンダの継続的な衝撃による部品の破損、センサーの位置ずれの対策につながります。
またシリンダ位置・状態の見える化によって、途中停止したシリンダが一目で分かる、ストローク時間の傾向監視によって予兆保全を可能にする等、エアシリンダで課題とされてきた事に抜群の対策を織り込んでいる物になります。
なぜ電動化時代でもエアーなのか

ここからは筆者の経験に基づく考察です。
結論から言うと、電動化時代でも空圧が残る理由はまだ十分あるからです。しかも残るどころか、無くすことはほぼ不可能ではないかと考えています。
理由は2つ。
1.イニシャルコストが安価
イニシャルコストを考える際、エアーシリンダの場合の検討することは意外とシンプルです。
- どこからエアーを取得するか
- どこにバルブを置くか
細かく言えばミストセパレータ等は必要かなどありますが、導入できるか否かを判断するのであれば、最低限これらを考えれば良いと思います。
では次に電動シリンダの場合はどうか、
- コントローラは盤内に配置できるか
- 盤内機器が増えるが電源容量は足りるか
- 故障の際のバックアップはどのように行うか
等々、パッと考えれないものがどうしても多くなってしまうのが特徴です。
2.既設設備との相性がいい
これは検討を重ねれば自ずと分かることですが、
どのみちエアーを一本でも引く必要のある設備、またはすでに近くまでエアー配管が来ている状態では、どのみちエアシリンダにしたほうが安価であり手っ取り早いという結論です。
既設ラインは空圧前提で組まれていることが多く、配管、メンテ、保全スキル、交換部品の考え方まで空圧寄りで固まっているケースが少なくありません。
そこへ電動化を突然入れると、部品代だけでなく、制御設計、配線、パラメータ、保全教育まで追加で検討しなければなりません。
なので、エアーの方が安いというのは、単に機器単体の値段だけの話ではなく、現場全体の変更コストと保全性を担保する工数まで含め、トータルしてエアーのほうが安価という結論です。
空圧が残るのは古いからではなく、現場全体で見るとまだ合理的だから
それでも電動シリンダが勝つ領域
もちろん、だからといって何でも空圧でよいわけではありません。
電動アクチュエータが強い領域は、やはり明確です。
CKDは電動アクチュエータの特徴として、動作を細かく制御できることを最大の特徴に挙げています。
強みとしては、加速のコントロール、位置決めのコントロールがしやすいこと、プログラム変更で多品種対応しやすいこと、通信機付きモデルではIoT化が可能なことが整理されています。
さらに、圧入工程では時間、速度、力を設定でき、圧入ミス確認やデータ管理が可能とされています。
つまり電動が強いのは、こんな場面です。
- 多点位置決めが必要
- 加減速を細かく作り込みたい
- ワークに衝撃を与えたくない
- 圧入条件や力の履歴を管理したい
- 品種切替をソフトで吸収したい
この領域では、やはり電動の方が圧倒的にやりやすいです。
この製品が刺さりそうな現場

ここからは筆者の考察ですが、特に刺さりそうなのは次のような場面です。
①タクトを詰めたいが、衝撃で悩んでいる設備
速度を上げたいのに、先端衝撃や突き当てで悩んでいる設備です。
KEYENCEは、スマートクッションバルブが速度アップと衝撃緩和の両立を狙う製品として案内しています。
②センサ調整に時間がかかる設備
CS-Lシリーズは、出したい位置でボタンを押すだけの設定方式を打ち出しています。
エアシリンダを多量に使用する自動機など、PLC側でできることは限られるでしょう。段取りや交換時の再調整時間を減らしたい現場には相性がよさそうです。
③故障前の兆候を少しでも拾いたい設備
KEYENCEは、位置情報や衝撃レベル出力によって、ストローク時間の算出や装置トラブルの早期発見につながると説明しています。保全目線ではここがかなり気になります。
特に筆者自身、端のセンサー検知までシリンダが動いていない等のトラブルで泣かされた経験があります。
エアーシリンダなのに位置を見える化できるというのはかなり魅力的です。
結局、エアーと電動ではどっちがよいか
結論はシンプル。
「何に重きを置くかで変わる」です。➡ケースバイケースです・・・
エアーが向いている
- イニシャルコストを抑えたい
- コンパクトにしたい
- 重量物や高速2点動作を扱いたい
- 単純動作を安定して繰り返したい
➡正直に、電動である必要がなくてエアーが最寄にきているならエアーを選びましょう。
電動が向いている
- 高精度な位置決めをしたい
- 多点搬送、多品種対応をしたい
- 力、速度、加減速を細かく制御したい
- データ管理やIoT連携までやりたい
まとめ
今回のKEYENCEの製品は、エアーと電動の中間に踏み込んでいます。
空圧のままで、電動っぽい見える化と最適化を一部取り込もうとしている。
そこが、このリリースのいちばん面白いところです。
要点のまとめを最後に書いておきます。
- KEYENCEが2026年1月26日に、ライン型シリンダセンサ&スマートバルブ CS/SPシリーズを発表
- エアシリンダはイニシャルコスト、コンパクトさ、でまだまだ強い
- 電動アクチュエータは位置決め、多点制御、力制御、IoTで優位性がある
- これからの空圧は、ただ使うだけでなく、見える化して賢く使う方向がますます重要になりそう
本記事は学習目的の情報提供です。実際の電気工事・設計・配線・機器選定・部材選定・改造は、法令・社内基準に従い、有資格者および責任者の管理下で実施してください。現場条件により最適解は変わるため、必ずメーカー仕様書・設計基準・安全規程・JISを確認のうえ判断してください。


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