なぜ交流送電が主流になったのか|エジソンとテスラの電流戦争から学ぶ

コラム
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この記事でわかること
  • なぜ送電では直流ではなく交流が主流になったのか分かる
  • エジソンとテスラの電流戦争のざっくりした流れが分かる
  • なぜ今の工場で三相交流が当たり前なのか分かる

この記事の対象になる方

  • 交流が主流になった理由を基礎から知りたい方
  • 三相交流がなぜ工場で使われるのか気になる方
  • 生技、保全、設備設計で電気の背景知識を深めたい方

はじめに

電気のことを勉強していると、ふとこう思うことがありませんか。

あれ、直流で動いている機器って結構多くない?
じゃあなんで送電は交流なの?
しかもなんで工場では三相交流が当たり前なの?

電気について、技術者としてしっかり知っておこうと思うと、その起源まで知りたくなるものですよね。
私は昔から気になりました。

実際、制御回路、電子回路、PLC、センサ、基板、バッテリー系など、機械の中を見ていくと直流ってかなり多いんですよね。
なのに、受電してくるのは交流です。それはなぜか……

モータは三相交流。
インバータも、いったん交流を直流にして、また交流に戻す……

なんかよく分からないけど、交流ありきの、まるで「交流が主役」っぽい世界になっています。

その理由は19世紀後半まで遡り、直流と交流が本気で争っていた時代がありました。
いわゆる、エジソンとテスラの電流戦争です。

みなさん、この伝説的なお二方はご存じでしょうか。
恐らく知名度ではエジソンが優勢。
アニメや漫画でニコラ・テスラは聞いたことある!くらいでしょうか。

こちらが、皆さんも伝記で読んだことがあるであろう、トーマス・エジソンさん。

こちらが、皆さんもアニメや漫画で聞いたことがある、ニコラ・テスラさん。

そして、この伝説的な二人の科学者が争っていた時代があったというわけです。

なにを争っていたのかというと、交流(AC)と直流(DC)、どちらが効率的かという争いです。

ちなみに、
直流(DC)送電システム:トーマス・エジソン
交流(AC)送電システム:ニコラ・テスラ
という対立関係です。

この記事では、

なぜ交流送電が主流になったのか
なぜ今の工場では三相交流が当たり前なのか

を、なるべくややこしい言葉を減らしながら、でも大事なところは外さずに、筆者なりの歴史解釈で整理していきます。

交流・直流どちらに利点があったのか

最初に結論を書くと、交流送電が主流になった最大の理由はこれです。

交流は遠くまで電気を送りやすかった

これだけ聞くと、「え、そんな理由?」と思うかもしれません。

でも電気って、発電所の近くでだけ使えればいいわけじゃないですよね。
発電機のすぐ近くでしか電気が使えないなら、かなり不便です。

電気は、遠くの工場、遠くの町、遠くの家まで届けないと意味がありません。

ここで重要になるのが、送電ロスを減らすことです。

電気を遠くへ送るなら、なるべく高い電圧で、なるべく小さい電流で送りたい。
そのほうが送電線でのロスを減らしやすいからです。

そして交流は、変圧器で電圧を上げたり下げたりしやすいという強みがありました。

変圧器は、交流の磁束変化を用いることで電磁誘導によって変圧していますよね。
磁界が変化しなければ誘導起電力が発生しないので、発電ができません。

誘導起電力については前記事をご覧ください↓

つまり、交流は

  • 発電所では高電圧にして遠くまで送る
  • 使う場所の近くで低い電圧に落とす

ということがやりやすかったんです。

これが交流のめちゃくちゃ大きな強みでした。

直流はどこで使用されているか

交流が勝った、という話をすると、
「じゃあ直流ってダメだったの?」
という印象を持つ初学者の方もいるかもしれません。

でも、そうではありません。

直流は今でもめちゃくちゃ使われています。
むしろ、機械の中身を見ると直流だらけです。

たとえば、

  • バッテリー
  • 電子回路
  • PLCやセンサの制御電源
  • スマホやPCの内部
  • サーボやインバータの内部回路

などなど、直流は今でも超重要です。
一番身近な例は、みなさんがよく使うスマホの充電器です。
家庭用コンセントのAC100Vを、充電器でDC5Vなどに変換していたりします。

つまり、直流は負けて消えたわけではなく、

社会全体に電気を配る仕組みとしては交流が有利だった

というだけなんです。

昔は直流を推していた人がいた

ここで登場するのが伝説的な人物、エジソンです。

エジソンは、電球だけの人というイメージがあるかもしれませんが、初期の電力事業を大きく押し進めた人物でもあります。
そして彼は、直流方式を強く推していました。

当時としては、直流方式にもちゃんと意味がありました。

  • 仕組みが分かりやすい
  • 初期の設備として成立していた
  • 都市の一部へ電気を届けるなら実用的だった

という背景があったからです。

つまり、エジソンが直流を選んだのは、ただのこだわりではなく、当時としては十分現実的な選択でもありました。

ただし、問題がありました。

遠くまで送りにくい。

これが痛かったんです。

発電所の近くでは使えても、広い範囲へ効率よく配るのが苦手だった。
これが直流方式の大きな弱点でした。

一方で交流を強く押したのがテスラ陣営

ここで交流側の象徴としてよく語られるのが、ニコラ・テスラです。

テスラは、交流機械や多相交流、回転磁界などの考え方を発展させた人物として有名です。
そしてこのテスラの技術を、事業として社会に広げていったのがウェスティングハウスという人物です。

ここは、よく「エジソン vs テスラ」の二人のケンカみたいに語られますが、実際には次のような構図で見ると分かりやすいです。

  • 直流陣営
    主な技術者:トーマス・エジソン
    主な法人:エジソン・ゼネラル・エレクトリック・カンパニー
  • 交流陣営
    主な技術者:二コラ・テスラ、ジョージ・ウェスティングハウス
    主な法人:ウェスチングハウス・エレクトリック・アンド・マニュファクチャリング・カンパニー

つまり、交流は

テスラが技術を作り、ウェスティングハウスがそれを広げた

というイメージです。

交流が勝った象徴的な出来事

交流が本格的に主流になる流れを加速させた象徴的な出来事として、よく出てくるのが

  • 1893年のシカゴ万博
  • ナイアガラの電力開発

です。

このあたりで、交流は

実験室の理屈じゃなくて、本当に大規模に使えるんだ

ということを社会に見せつけました。

これがかなり大きかったわけです。

技術って、理論が正しいだけでは勝てません。
ちゃんと現場で使えることを示した側が強い。

今の工場では「三相」交流が当たり前なのはなぜ

ここからが、今の工場の話につながります。

交流送電が主流になっただけなら、工場の中も単相交流だらけでもよかったはずです。
でも実際は、工場の動力は三相交流がかなり多いです。

なぜか。

それは、

三相交流がモータを回すのにとても都合がいいから

です。

三相交流は、位相がずれた3本の交流です。
これを巻線に流すと、モータの中で回転磁界を自然に作れます。

この回転磁界があると、回転子がそれに引っ張られるように回ります。
つまり、モータを回すのにすごく相性がいいんです。

ここが、工場にとって大きいところです。

工場で多いのは何かというと、結局

  • ポンプ
  • ファン
  • コンベア
  • 搬送装置
  • 加工機
  • 各種回転体

など、モータを使う設備が山ほどあります。

なので、

  • 交流が送電で有利だった
  • その中でも三相がモータと相性抜群だった
  • だから工場で三相交流が当たり前になった

という流れです。

今の工場で三相交流が強いのは、送電だけでなく、動力としても優秀だったからです。

三相モータの回る仕組みについては、こちらの記事をご覧ください↓

じゃあ直流の機器が多く見えるのはなぜか

ここで、最初の疑問に戻ります。

実際、設備の中を見ると直流の機器はかなり多いです。
これは本当にその通りです。

でも、ここで考えたいのはどの階層で見るかです。

社会インフラとして見ると

交流が主流です。
発電、送電、配電、動力で強いからです。

機器の中身として見ると

直流が多いです。
制御や電子回路では、直流が扱いやすいからです。

つまり、

土台は交流、細かい制御や内部回路は直流

という住み分けがされているわけです。

このような見方をすると、今の世界がかなりスッキリして見えるのではないでしょうか。

結局、電流戦争って何を争っていたの?

電流戦争というと、なんだか漫画みたいな名前ですが、争っていた内容はかなり現実的です。

要するに、
これからの社会インフラの標準を直流にするのか、交流にするのか
という大勝負でした。

今後の事業がどうなるか、世界がどうなるかの分かれ道だったわけです。
しかも当然この大勝負は、単なる理論ではなく、いくつかの実務的な指標を持って競っていました。

それは

  • どちらが安全か
  • どちらが経済的か
  • どちらが広い地域に配れるか
  • どちらが事業として勝てるか

という現実的な争いでもありました。

エジソン側は、交流の危険性をかなり強くアピールしていたようです。
逆に交流陣営は、実際に大規模な送電や照明で実績を見せていきました。

最終的には、

交流のほうが大きな社会を支える電力網に向いていた

ということで、交流が主流になっていきます。

まとめ

なぜ交流送電が主流になったのか。
それは、ひとことで言えば

交流の方が、発電して遠くへ送り、必要な電圧へ変えて、さらにモータまで回しやすかったから

です。

特に大きかったのは次の点です。

  • 交流は変圧器で電圧を上げ下げしやすい
  • そのため長距離送電に向いていた
  • 発電機の原理的にも交流は自然に得やすい
  • テスラの交流技術とウェスティングハウスの事業化がそれを押し進めた
  • さらに三相交流はモータと相性が良く、工場で一気に強くなった

今回の疑問は、
直流の機器は多いのに、なぜ交流が主流なのか
というところから始まりました。

その答えは、

機器の中身では直流が多くても、社会全体へ電気を届けて、大きな動力を扱う仕組みとしては交流が有利だったから

です。

そして、その交流の中でも、工場で三相が当たり前なのは

三相交流がモータを回すのに都合がよすぎたから

です。

歴史の話に見えて、実は今の工場の当たり前につながっている。
そう考えると、エジソンとテスラの話も、ただの昔話ではなくなってきますよね。✨


本記事は学習目的の情報提供です。実際の電気工事・設計・配線・機器選定・部材選定・改造は、法令・社内基準に従い、有資格者および責任者の管理下で実施してください。現場条件により最適解は変わるため、必ずメーカー仕様書・設計基準・安全規程・JISを確認のうえ判断してください。

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